釣話−3  

□ 価値
 同じ種類で同じ大きさの魚でも、それぞれの川で魚の価値には違いが確実に存在します。つまり川によって極端にいえば同じ川でも区間によって、魚のランクに差があり釣るために必要な技術レベルに違いがあります。釣りの対象魚の価値を示す要因は大きく分けて五つあると考えています。第一は全身の姿、頭やヒレの形、体の太さや張り具合、色合いなどが美しいとか野性的とかの見た目です。第二は川によって魚の基礎的な瞬発力や持久力などの運動能力に違いがあります。ファイト時の引きの強さや暴れ方につながり、釣り味もさることながら釣り上げられるかどうかに直接関係します。第三は魚の警戒心と反応速度に違いがあります。魚を掛けられるかどうかという点においてたいへん重要です。第四は規模、形状、水速、水深、障害物などの川の状態よる釣りの難しさに違いがあります。第五は全体としての生息数で、大物や幻の魚に代表される希少性です。色々な川でたくさん魚を釣って来ましたが、結局はより価値のある魚を釣り上げて満足したいのが本心です。北海道の川である程度の成績を残している釣人には、より価値のある魚に挑戦してほしいと思っています。ただし必然的に釣ることが難しくなるので、そのことを納得してもらえるかどうかが難しいところです。川で大物が釣れたことを知るとサイズはもちろんですが、すぐに釣った魚や川の難易度の方へ関心が向きます。川による魚のランキングにこだわってしまいます。最高水準の魚を釣る。人生の中で釣りを続けている人の夢や目標として、間違いなく価値があることです。

□ 勝負
 今はもう釣りの勝負を挑まれることは少ないですが、2010年頃まではよく勝負を挑まれました。川釣りでルアー、フライ、ミャク釣りの、単純にどちらが釣りが上手かを決める一対一の勝負です。河川と区間と対象魚は挑戦者に決めてもらいます。魚種は問いませんが、生息数が極端に多いか少ない魚種やサイズは勝負がつきにくので除きます。釣法は対戦相手に合わせて、タックルなどの制限は全くありません。実際の川で細かく決めなければならないこともありますが、勝負方法の基本は次の通りです。二人が同じ地点から入渓します。先攻後攻を決めて、先攻者が上流へ進んで5分以内にここぞと思う場所を決めて釣りを始めます。岸からでも川の中でも構いませんが、立ち位置は固定にして10分間釣りをします。その時は後攻者は釣りをしません。先行者の制限時間が終了すると、今度は後攻者が場所を決めて釣りをして先行者は釣りをしません。この過程を各々10回行ってより多く釣った方が勝ちになります。勝負時間は二人合計で5時間です。勝負の途中でも相手が負けを認めれば終了します。この勝負方法では、どの流れに魚がいるかを判断する能力と、釣るための知識や技術があるかないかがはっきり問われます。相手が釣っている時は自分はその釣りを観察できるので、その時に釣れる条件を判断する能力が問われます。自分では気に入っている勝負方法です。プライドを賭けた勝負なので、集中度と緊張感が高く、それがたまらなく好きなので、これまで勝負を挑まれて断ったことはありません。今までの対戦数や勝敗は想像にお任せします。ただし惨敗は1回だけで、ミャク釣りのヤマメ勝負で相手は当時名人と呼ばれた古老でした。ミャク釣りなのに竿と仕掛けをフライやテンカラのようにさばいていました。その後1年かけてその技を身に付けました。しかしあの時の、見たこともない技への驚きと全く歯が立たないくやしさは決して忘れないでしょう。

□ 厳寒期
 一年中釣りをしています。とは言え、12月下旬から2月上旬の厳寒期の約一月半の期間は、流れている川の釣りではなく、凍った川や湖や沼の上で氷上釣りを楽しんでいます。一番好きなのは川の氷上釣りです。実は厳寒期でも、ミャク釣りやルアーフィッシング、ドライは無謀ですがフライフィッシングで、流れている川で釣りができます。近年は地球温暖化の影響なのか冬の十勝地方でも凍らない区間がある川が増えています。その中でも規模の大きな川は凍りにくく、積雪で川岸まで近づくには苦労しますが釣りができます。ただし、低水温で釣れる可能性は非常に低く、一発大物を期待しますが実際は何とか1匹を手にできるかどうかの釣りです。釣果が期待できる川もあります。温泉が湧いている川です。特に気温の低い日は川面から湯気が立ち昇り、幻想的なすばらしい情景の中で釣りができます。しかし、魚が反応する高水温である上流域まで行くにはたいへんな苦労が必要です。道路はゲートで閉鎖されているので、深い雪の中をかなりの距離自力で進まなければなりません。さらに、気温が低いほど水温が高い上流域まで行かなければなりません。過去に、短いスキーやスノーシューを履いて何回か釣りに行きました。今でもその過酷さを思い出します。体力はまだ何とかなるので、また行こうかと思うこともありますが、どうも気が進みません。厳寒期の川釣りは、寒さと忍耐と体力との勝負で辛いことばかりで、決して薦められるものではありあませんが、寒さは把握しておいても良いと思います。分かりやすいのでミノーのルアーフィッシングで説明します。気温が氷点下になるとはじめにロッドのガイドが凍ります。さらに低気温になるとラインも凍ります。さらに低気温になるとミノーのボディが凍り氷でコーティングされた状態になります、さらに低気温になると、ミノーのフックまでもが凍り氷でコーティングされた状態になります。フックまで凍るのは気温が-10℃近くからです。最近はアンダーウェアを中心にウェアの防寒性能が非常に高まり、体は寒さに耐えられるようになってきました。しかし、いつの時代も同じで、ガイドなどが凍ったら何とかして氷を取り除いて釣るしかありません。

□ リセット
 北海道は2016年8月に4回の台風が通過し各地で甚大な被害が発生しました。十勝地方では全河川の全流域が大増水し、氾濫や橋が崩壊した河川もあります。河川は大増水すると形状が著しく変化します。カーブが直線化されたり、深場が浅くなったりはあたり前で、川筋が右岸側から左岸側へ移動することさえあり、大増水が治まった後は、全く新しい渓相にさえなります。しかし、今まで何回かの大増水を経験していますが、いかに増水しようと形状が変化しようと、魚の生命力はたくましく、魚が極端に減少したことはありません。長年釣りをして釣れるポイントを熟知していた方には非常に残念ですが、私は2017年は釣りの好機と考えています。河川形状が大きく変化したことはすなわち、ポイントが一新されたことになります。形状が長年維持された河川は、魚がいるポイントが固定化され、多くの釣り人が入渓し、魚がいるにも関わらず釣れない要因となります。それが2017年は、誰もがポイントを見つけることから釣りを始めなければなりません。大増水では川原が広い河川の方が形状の変化が大きいものです。十勝地方で言えば、大型魚が棲む平野部の流域が該当します。事実、各河川の平野部の形状変化はすさまじいものです。私のように釣りを仕事にしているとか、よほどの物好きでもない限り、釣りもしないで川のポイントだけを見つけようと歩き回る人間はめったにいません。とにかく釣りに行って、労をおしまずに魚がいるポイントを見つけた人間に幸運が訪れます。2017年は春からどのような釣りが展開するのか非常に楽しみにしています。

□ 川釣りのいろいろ 
・ 自由な日に釣りができるなら、土曜日と日曜日は入渓者が多いので釣りを避けて平日の釣りを奨めます。平日でも、土曜日や日曜日に入渓されたことを考えて、魚に警戒心を解く時間を与えた後の水曜日〜金曜日を奨めます。特に大型魚は、釣られていなくても入渓しただけで警戒してしまいます。
・ 低気圧や台風の雨で、川が増水する直前から増水の始めと、増水が治まりかけたタイミングの釣りを奨めます。魚は浮袋や側線で気圧の変化を感じることができると言われています。魚の生理学的な理論とは別に私は、魚にはこれから雨が降り川が増水するこがを分かっているのではないかと考えています。増水中はエサを食べられなくなり、急流に流されないために体力を使わなければならないことが分かっているので、増水前にエサをたくさん食べて体力をつけておこうとします。増水後はお腹が減っていることと、失った体力を回復すためにエサをたくさん食べたいはずです。どちらも、魚の活性が高い状況になります。
・ 朝まずめと夕まずめは釣りに適した時間帯であると知られています。しかし、どの時期でもどの場所でもこの時間帯が釣りに適していると考えるのは単純すぎます。朝まずめや夕まずめが良いのは、水温が魚の適水温の範囲内にある場合に限定してのことです。たとえば、水温や気温が低い時期の釣りでは、昼間の方が良く釣れます。同じく水温や気温が低い山岳渓流も、昼間の方が良く釣れます。昼間は気温や水温が上昇し、魚の活性が高くなります。さらに、太陽光で魚の体が暖まり活性が高くなることを忘れてはいけません。経験があると思いますが、同じ気温でもお日様が照っている時は暖かく感じ、実際に体は暖かくなります。魚も同じことです。また、水生昆虫が羽化していたり虫が飛び交う時間帯も魚の活性が高くなります。大切なのは魚が活性する条件を知った上で、その時間帯を釣ることです。
・ 釣るためには技術を無視すれば、魚がいる川を知り、その川のポイントを知り、ポイントでは魚がいる流れが読める、この3条件が基本的に必要になります。1番目2番目の条件は、頑張っていろいろな川でいろいろなポイントを釣り歩けば分かってきます。3番目は経験による習得もさることながら釣りのセンスが必要になります。2番目までの条件をクリアすれば、その川の平均的な魚を釣ることはさほど難しくありません。時期によっては大型魚も釣れるでしょう。しかし、大型魚に的を絞った場合は、彼等は時期によって移動することを考える必要があります。もちろん、平均的なサイズの魚も移動しますが、数が多いので良いポイントには後から後から入ってきます。しかし、極端に数が少ない大型魚はそうはいきません。大型魚を釣りたいならば、彼等が時期によってどこに移動しているかを把握しなければなりません。

□ ヒグマ出没情報 
 北海道で最も警戒しなければならない野生動物はヒグマです。各地域の中心都市から山へ向かって車で30分も走れば、ヒグマの生息圏に入ると考えください。北海道の川や湖の釣りでは、ヒグマがいるかいないかと問われれば「いる」が正解で、出るか出ないかと問われれば「ほとんど出ない」が正解になります。これは、札幌でも旭川でも帯広でも同じことで、ヒグマ対策が絶対に必要になります。十勝地方のヒグマ出没情報は新聞に掲載されるので、日頃から目を通していますが、全てを把握してはいませんでした、そこで2014年の夏に、過去5年間の十勝地方のヒグマ出没情報をまとめようと考えました。新聞は電子化されているので、新聞社へ行って調べれば分かるかなと考えましたが、たいへんそうなので最終手段としておき、まずは、ヒグマを目撃したら警察へ連絡するので警察へ問い合わせをしました。すると、十勝総合振興局が管理しているとの回答がありました。十勝総合振興局へと問い合わせると、札幌の方にあると言っていたので、たぶん、北海道道庁に情報があり、そこから取り寄せるようにしてくれる運びになりました。これだけ多くのヒグマが出没し犠牲者も出ている中で、地域の中心組織が、今まで出没情報をまとめていないと知って残念でしたが、とにかく待つことにしました。結局は2か月近く待って、十勝総合振興局から、使いやすいように工夫しますと連絡が入ってすぐに、エクセルlで情報が届きました。私としては一覧表さえあれば、自分で情報を市町村単位にまとめようと考えていましたが、そのようにまとめられていて検索もできたので、十勝総合振興局の担当者にはたいへん感謝しています。待ったかいがありました。目を通すと、私が目撃し連絡したヒグマの情報がしっかり載っていました。今まで安全と考えていた地域でもヒグマが出没していることが分かり大変役に立ちました。ただし、ヒグマの出没はこの情報が全てではありません。目撃しても警察へ連絡しない方がかなりいます。山間部や源流域などヒグマの生息数が多い地域では、出没するのが当たり前なので、情報にならないケースもあります。ヒグマ出没情報が必要な方はお問い合せください。十勝総合振興局には、ヒグマ出没情報を今回だけとしないで、更新していただき、その存在を公開して、皆さんにとって役立つ情報にしてほしいと希望します。

□ 魚との距離 
 魚は川の中から外の世界が良く見えています。音の速さは空気中では秒速約331mですが、水中は秒速約1500mで非常に速く伝わります。このような状況にある魚を釣るには、釣り人は魚から見えないように、音が伝わらないように、できるだけ遠くから釣ることが基本です。ルアーフィッシングやフライフィッシングは、疑似餌とラインが飛ぶだけの距離で遠くから釣ることができるので、まさに適している釣法と言えます。しかし、魚に近づいた方がより釣れることも多くあります。たとえば、川の真ん中に速い流れがあり、それをまたいだ対岸のポイントを狙うとします。フライフィッシングのドライの場合、遠くに立って速い流れにラインを乗せてしまうと、ラインが速い流れに持って行かれてフライが自然に流れずに魚が反応しません。これを回避するためにメンディングを繰り返すと、川面を荒らしてしまい魚は警戒して反応しなくなります。こういう状況では、近くに立ってロッドを高く構えて、ラインを速い流れに乗せないで空中に保持させて釣った方が有利です。また、上空に木の枝がかぶさっている川岸を狙うとします。ルアーフィッシングでは遠い距離ほどキャスティングの精度は低くなるので、遠くから狙うとルアーがポイントを外すか木の枝に引っかける危険があります。ポイントを外して何回もキャスティングすると、ルアーの着水の衝撃を川へ繰り返すことになり、魚は警戒して反応しなくなります。また、魚にルアーを何回も見せることになり、釣れない要因になります。このような状況でもやはり、近くに立って正確にキャスティングした方が有利です。距離が制限されるミャク釣りやテンカラでは、魚への近づき方に問題があり釣れない場面を目にします。ルアーフィッシングやフライフィッシングでは、遠くに立ち過ぎて釣れない場面を目にします。問題はどこまで魚に近づけるかであり、川の釣りではどのような釣法でも、どこまで近づけるかを予測できて、近づくための技術を学んでいることが非常に重要です。

□ 大物用本流竿の機能
 私が求める大物用本流竿の機能は高感度と高強度と軽重量です。感度は、オモリが川底に接触しながら流れる振動やオモリが川底の石に当たる衝撃が手に伝わってこなければなりません。これが感じられなければ、ミチイトに必要以上のたるみを生じさせてしまい、ミチイトの張りとたるみを目で確認するだけでは限界があり、川の正確な深さと川底の形状を把握することができません。結果として、大型魚がいる川底ギリギリにエサを流すことができずに、エサの動きにも不自然さが生じて、釣れる魚が釣れなくなります。最悪は根掛かりが頻発して釣りになりません。また、目印に出ないほんのわずかなアタリを見逃してしまうことなり、希少な大型魚の存在を察知することができません。竿はもちろん大型魚に対応できる強度が求められます。竿の強度は曲がり具合と粘り具合に密接に関係しています。絶対的に竿全体の力が強くなければ話になりませんが、大型魚の強烈な力に対抗するためには、曲がりがしっかり胴に入って竿全体の粘りで魚の力に対応してくれる必要があります。さらに、ミャク釣りはリールがなくミチイトは長くならないので、竿の操作を含めた自身の運動と竿の機能でしか魚の動きに対応できません。魚に先手を取られることもしばしばあります。魚の動きに対して遅れを取った場合に、竿の曲りと粘りは魚の動きをかわすためにも重要です。最後は重量です。大物は規模の大きな川にいることが多いので長い竿が必要で当然重くなります。軽い竿は操作がしやすく、長時間釣りをする日も風の強い日も軽い竿が絶対的に有利です。近年、大物用本流竿はどんどん進化して、今ではかなり満足できる機能になってきました。大物用本流竿ではありませんが、北海道の特別な川に対応できる竿があればうれしいと思っています。北海道には4.5m以下の竿でなければ釣りがしにくい規模の川が多くあります。ただし、その中には50cm以上のニジマスやアメマスが生息している川があります。50cm以上の魚に対応する4.5m竿、できればマルチで4−4.5−5mの竿。このような竿は需要が少な過ぎるので中々作ってはくれないでしょうが、あればさらに大物釣りへの期待がふくらみます。

□ 悪い顔 
 サケ科の魚は成長が進むにつれて顔付きが見事に変わっていきます。多くのオスは晩年、鼻が曲がり、凄味が出て、ふてぶてしく、狡猾で、不気味ながら、やんちゃさが少し残る顔になっていきます。私は彼等を釣った時、興奮と感動の中で敬意を込めて「悪い顔」と呼んでいます。決してブサイクという意味ではなく、映画に出てくる、悪い政治家や実業家や権力者の大物を演じる、俳優の悪党顔や悪役顔がイメージです。立派なオスの悪い顔は成田三樹夫に見えてしまいます。イトウだけは佐分利信にしか見えず誰もかないません。メスはオスほどの形の変化は見られませんが凄味が増しています。美しさ、上品さ、艶っぽさを持つ女優が、怨念や情念で罪を犯してしまった役どころの悪い顔に見えます。メスだけに、釣られてしまいうらめしそうに見える感傷が、そうさせるのかも知れません。高峰三枝子か岩下志摩で非常に迷うところです。魚の種類によって悪い顔になる度合が違い、同じ種類の同じサイズの魚でも、悪い顔になる度合が違います。大物を釣るなら、最高に悪い顔した迫力に感動してしまう魚に出会いたいものです。贅沢で難しいことですが。

□ ウェーダー 
 私が使用しているウェーダーは春〜秋用と冬用と湿原河川用の3種類です。春〜秋用ウェーダーは、移動距離が長い場所や山岳渓流など険しい場所での釣りが多いので、暑くても体が楽で、歩きやすく足への負担が少ない、ストッキングフットのウェーダーとウェーディングシューズの組み合わせです。ウェーダーは、水中に胸まで立ち込むことや深い川を渡ることを考えてチェストハイで、透湿性の高い素材を選んでいます。ウェーダーの内側に水分が溜る原因に、自分の汗と、水温と体温の温度差による結露があります。透湿素材は水分(水蒸気)を外に通すので、ウェーダーの中が蒸れたり濡れたりしにくく快適さが違います。ウェーディングシューズは、なるべく軽量で、全体の造りがしっかりしていて、ソールが硬めを選んでいます。以前、ライトウェイトの全体が柔らかいタイプを使用したことがありますが、足へ衝撃と負担が大き過ぎて、厳しい場所ではとても使用できないと思いました。ソールは滑りにくさが安定しているフェルト製で、摩耗に強いピン付です。ピン付は普通のフェルトに比べると耐久性が数段上回ります。普通のフェルトを使用している方は、ホームセンターで小さなネジを購入してフェルトに取り付けることができるので、試してみる価値があります。ラバーソールの機能向上を聞いているので、今後は視野に入れる必要があると思っています。春〜秋用ウェーダーは、発熱素材の下着や内側がフリースのパンツを履けば防寒性を高く維持できるので、気温によっては寒い時期でも使用しています。結果として使用回数が多くなり、ウェーダー、ウェーディングシューズともに修理をしながらでも約1年間で使用ができなくなります。冬用ウェーダーは、クロロプレン(ネオプレン)のブーツフットでチェストハイを使用しています。クロロプレンのストッキングフットにウェーディングシューズの組み合わせは、足首付近から下に空気の層がなく保温効果が弱いので、足が冷たくなりやすいことを実感しています。冬用ウェーダーは寒さから身を守ることが第一条件なので、空気の層ができるブーツフットにしています。シューズがきついと足がつらいので、ウールやフリースの厚い靴下を履くことを考えて、足のサイズは大きめを選んでいます。湿原河川用ウェーダーは、自分で改造したものを使用しています。湿原河川は川が凍っていな間の秋〜春に釣りに行きます。川岸を移動しながら釣ることがほとんどです。川岸は草か泥か沼地か雪の状態で、ソールがフェルトや平坦形状のラバーは非常に滑りやすく危険です。さらに、雪の時のフェルトは、水分を含むと雪がどんどん底に付いてしまい、厚底になって歩けなくなります。湿原河川用ウェーダーのソールは長靴の底のようなデコボコしたラジアルが最高です。寒い時期の釣りですが、歩き回るので体は汗を多くかくので、水分を完全に遮断するクロロプレンは適していません。そこで私は、古くなった春〜秋用のストッキングウェーダーのストッキッグ部分を切り取り、ラジアルソールのフィッシングブーツを購入して、この二つを接着剤でつなぎ合わせて使用しています。透湿素材なので体は快適で、ソールは滑る心配がありません。もちろん、ブーツのサイズは厚着に備えて大きめを選んでいます。ブーツフットウェーダーは足のサイズを大きくするとブカブカになりますが、長さを調節しているので問題ありません。最近のクロロプレン製ウェーダーは素材の性能向上や立体裁断などで運動性が高くなっています。しかし、体を動かす度にゴムを伸縮させることと同じになるので運動量が増し、私は疲れやすいと思っています。ウェーダーの下は、滑りやすく動きやすいので、表地がナイロン製のパンツを履くことがほとんどです。

□ 釣り場へのこだわり
 川釣りの愛好者ならほとんどの人は、魚がたくさんいて誰もいない川を独り占めにして釣りたいと考えていると思います。私はその傾向が人より非常に強いです。そのために、より多くの川を知り、より多くのポイントを知ろうと、それなりに努力をしています。毎年、釣果がどうであれ、多くの川で釣り多くのポイントで釣っています。早春や初冬には、背の高い草がなく樹木に葉がなく川は見通しが良いので、双眼鏡を片手に車で走り回ってポイントを確認しています。とにかく、誰もいない川が好きです。また、同じ数の魚を釣るなら、100匹の魚がいて釣り人10人で一人あたり10匹釣るより、誰もいない川で10匹しかいない魚を一人で釣ることを選びます。おかげさまで、川ではめったに釣り人に会いません。先に釣り人がいれば別のポイントへ移動して釣りができています。次に、できるだけ管理されていない、放流魚が少ない川が好きです。たとえどんなに釣れようと、どんなに大きな魚がいようと、放流魚が中心で成り立っている川はどうも好きになれません。管理されている釣り場へ出かけるのは、誘われるか仕事の時だけです。氷上釣りでもこの傾向が強く、シーズンが開始したら自然釣り場で釣ります。氷上釣りまでこれほどまでこだわる必要はないと分かっていますが、どうしてもこだわってしまいます。十勝地方の自然釣り場でのワカサギやチカの氷上釣りは、穴の位置が少しずれただけで釣果に大きな差が生じることが多くあります。人が少なく広い氷上のどこで釣るかの判断は、積み重ねた経験の上に間違いなく勘が必要になります。仕事で釣りをしている限り、川が凍って渓流魚が釣れない時期でも、釣りの勘だけは維持させなければなりません。自然釣り場での氷上釣りは勘を養うための絶好の場面になります。好みむと好まざるに関わらずどのような釣り場でも、釣りガイドや講習、釣果情報の公開、釣り場の紹介に備えて、情報は必ず入手しています。情報を入手できなかったり情報量が少ない時は、ポイントと釣りの状況を確認するために釣りに出かけます。

□ ミャク釣りのエサ
 北海道の川のミャク釣りで持っていくエサはブドウ虫とミミズとイクラを基本にしています。この3種類と現地に生息するクロカワ虫で、ほとんどの川で釣りが成り立っています。エサの条件として色も考えているので、一番実績の高い白色系のブドウ虫をはじめに使い、アタリがなければ赤色系のミミズやイクラに変え、それでもアタリがなければクロカワ虫をエサにしています。最初からクロカワ虫を使う手もありますが、クロカワ虫は川によって時期によって生息していないことが多く、採取も面倒なので使うエサの順番は最後です。ミミズはシマミミズが良く、狙う魚の大きさによって使い分けています。25cm未満の魚なら普通の太さで、25cm以上なら太いミミズを使います。太いミミズにドバミミズがありますが、シマミミズの方がより効果があると実感しています。イクラは特に春先と秋以降に有効です。普通のイクラでアタリが乏しい時は、2010年に開発に参加した「アトラス リバークイーン ガーリック」を使っています。ニンニク風味に仕上げた大粒イクラです。ニンニクは渓流魚に効果があります。興味があればすりおろしニンニクをイクラにまぶして試してみてください。イクラでは数粒をまとめてストッキングで包んで作るイクラサックを使うこともあります。魚種や地域や時期によって特別に使うエサもあります。解禁後間もないヤマメには、ブドウ虫より小さくて魚の口で小突かれてもエサ持ちの良いイタドリ虫の方が有効です。ヤマメには現地で採取するカゲロウ類の幼虫も良いエサですが、持っていくエサで十分に釣れるので使っていません。川によっては、ニジマスやアメマスに赤色系のエサとしてミミズよりもヤマギ虫の方が有効なことがあります。十勝地方を中心に上流域で夏以降にニジマスがバッタに偏食していることがあります。通常のエサには全く反応しない状況で、川原にいるバッタをエサにすると入れ食いということを多く経験しています。そのような状況ではトンボもりっぱなエサになります。ニジマスにはマグロやスジコもりっぱなエサです。最上流域に生息するオショロコマや小さな川で群れているエゾイワナは、環境的にエサが乏しく飢えているので、魚肉ソーセージでも釣れます。

□ お盆
 お盆は、先祖の霊があの世から子孫の元へ帰ってきて、楽しいひとときを過ごしてまた帰って行くという、日本古来の信仰に基づいた行事です。その時期を調べると、大多数は8月13日〜16日で、東京・横浜などの一部が7月13日〜16日、沖縄・奄美大島は旧暦の7月15日で毎年時期が変わるそうです。子供の頃から祖父母や両親から、お盆の時期は足を引っ張られるから川や海へ行ってはいけない、殺生をしてはいけないと教えられて育ったので釣りはしませんでした。今でもプライベートでは絶対に釣りをしません。しかし、お盆の時期は夏休みも重なり、釣りのガイドや講習を依頼されることがあります。漁師と同じように仕事として割り切って引き受けますが、せめてもの気持ちとして自分は極力釣りをしないように心掛けています。お盆はお墓参りをして静かにしていることが私には何よりです。一年中釣りをしたいと思っていますが、お彼岸もありますが、お盆の4日間は特別に感じます。

□ 自転車 
 十勝地方は昨年(2011年)9月に台風による大雨で全ての河川が大増水し、ほとんどの河川で形状が大きく変わってしまいました。釣れるポイントがリセットされた状況です。そこで今年は春先から各河川でポイントを探す釣りを続けています。好ポイントがあっても我慢して早めに釣りを切り上げて、どんどん川を進んで新たなポイントを探しています。結果として遡行距離が非常に長くなります。そんな時に役に立っているのが自転車です。昔から長い距離を釣る時には自転車を利用しています。私のスタイルは、退渓地点に車を置いてから自転車で入渓地点まで移動し、自転車を置いて釣りを始め、退渓地点まで釣ったら、駐車しておいた車で入渓地点まで戻って自転車を回収します。このスタイルにしたのは、元気なうちに体力を使うことを終えて、後は楽をしようとした考えが第一です。また、過去に退渓地点に自転車を置いていて場所が分からなくなって困りはてた経験も影響しています。自動車の大きさならめったに見失うことはありません。この自転車ですが、整備もしないでずいぶん長い間使っていたので、とうとう壊れてしまいました。自転車屋に持っていったところ、チェーンやタイヤ交換など修理にかなりの金額が掛かるといわれたので、思い切って新品を購入しました。通信販売でメーカーは無名ですが、20インチ・折りたたみ式・シマノ製6段変速ギヤ・後輪サスペンション搭載で見た目も良く、壊れた自転車に比べると月とスッポンの感があります。ただし思いのほか安かったので少なからず心配もあります。まだ届いていませんが非常に楽しみにしています。

□ シイ十勝川がない
 十勝川は上流の新得町のトムラウシ付近で、シイ十勝川とトムラウシ川に分かれます。子供の頃からそのように教えられて自分でも地図で確認しているので疑うことはありませんでした。2011年の初夏に書店へ立ち寄った時でした。文芸書を見た後に真夏にシイ十勝川へ釣りに行こうと決めていたので地図を見に行きました。適当に地図を手に取りシイ十勝川のページを見ていると、川の名前がシイ十勝川でなく十勝川になっていることに気が付きました。川の名前が正確でない地図はまれにあるので、いつもなら間違っているなと思って気に留めなかったと思います。しかしその時は何故か別の地図も見ることにしました。すると、その地図もシイ十勝川でなく十勝川になっています。これはおかしいと思って置いてある全ての地図を調べました。12冊中の7冊がシイ十勝川で5冊が十勝川でした。これは本格的におかしいと思い家に帰ってインターネットで調べました。すると、国土地理院、マピオン、Yahoo、Google全ての地図が十勝川になっていました。この時点でシイ十勝川は十勝川に名前が変わったのだと思いました。すぐに、「いつから」という疑問が湧き起こりました。興味があることは徹底して調べる性格です。いつ名前が変わったのかを知るために調べることにしました。地元の新得町役場を始めに、国土地理院、国土交通省、北海道開発局まで問い合わせることになりました。結果は、昭和41年の河川法の改正でシイ十勝川は十勝川に名前が変わったと知らされました。昭和41年といえば45年も昔の話で、私がシイ十勝川を知るずっと前のことです。何か気が抜けてしまい、何故今でも地図にシイ十勝川の表記が残っているのかまでは調べる気になりませんでした。シイ十勝川は私にとってたいへん思い入れの深い川です。魚が釣れる標高まで全区間を釣ると決意して、たいへんな苦労をして達成しました。たくさん魚を釣りましたが、恐ろしい思いも怪我もたくさんしています。思い起こせば、十勝を代表する大河川が、十勝川の名前で源流がないのは残念だと考えたこともあるので、シイ十勝川ではなく十勝川の方が気持はすっきりします。しかし、何十年も親しんできた川が、いきなりそのような名前の川はないと言われると寂しくてたまりません。私はこだわりを持って、これからもシイ十勝川と呼びたいと思います。あの川を知る多くの釣り人はシイ十勝川と呼んでいるのが現実です

□ 茶路川の異変 
 茶路川を初めて訪れてからすでに30年近くになります。私にとっては、80cm以上のアメマスを、ルアー、フライ、ミャク釣りのそれぞれで初めて釣った川であり、3釣法全てで釣っている唯一の川です。当時は邪道扱いされがちだったフライのルースニング+エッグフライで、人目を気にしながら釣っていたことも思い出に残ります。毎年、楽しく釣りができて魚に感動した川ですが、2010年の秋に変化がありました。毎年最盛期にはアメマスは随所ですごい数で群れをなして泳いでいる姿を見ることができましたが、その数があまりに少な過ぎました。河口から上流の二股まで確認しましたが、アメマスが群れで溜まっている箇所の数も、一つの群れの魚の数も驚くほどの少なさで、私の印象では例年の3割にも満たな状況でした。原因は何か、道東自動車道の工事、毎年起こる台風直撃での大増水、海水温の上昇などいろいろと考えたものです。そして2011年の秋を迎えました。アメマスは2010年と同じくまったく少ない残念な状況でした。2年間も続くと異変としか考えられません。北海道の太平洋岸全域のサケは2010年から2年間で大不漁が続いています。十勝の秋サケ定置網漁は、例年1万トン以上の水揚げですが、2011年は過去30年間で最低の4031トンになっています。アメマスとサケに因果関係があるかどうかは分かりませんが、時期が同じというのは何かがあるように感じます。サケは人工的に毎年孵化させて相当な数を放流しており、不漁の原因は関係機関で調査が行われるので復活の可能性があります。しかし、茶路川のアメマスはそうはいきません。自然に任せるしかありませんが、たいへん心配しています。
 追記 後日、漁業関係者がアメマスを駆除してしまったという噂が流れました。真偽は分かりません。

□ 嫌な気分
 ある方から、札幌市近郊の川で偶然出会った釣り人が私のことを知っていて、「山口は釣れなかったポイントではうっぷん晴らしに川に石を投げて立ち去り、釣れたポイントではもう釣れないように川に石を投げてから移動する」と言っていたと知らせてくれました。バカバカしくてまともに取り合う気にもなりません。私は矜持を持って釣りしていますから、もちろんそのような人間性に欠ける行為は絶対にしません。さらに、音の速さは空気中では毎秒340mですが水中では毎秒1500mと非常に速く、水中の音は空気中に比べて弱まりにくく遠くまで伝わる性質だと知っているので、川に石を投げて音を立てるような、釣りに不利になる愚かな行為は絶対にしません。どこでこのような根拠のない言われ様になったのかと思いますが、「釣れない時は地団太を踏んで川に石を投げてしまいたいくらいに悔しい」と話をしたこともあるので、それが原因なのかも知れません。今後は言動には十分に注意したいと反省しています。ある方からは、「一芸に秀でて頭角を現すと、あらぬそしりを受けるようになることは世の常です」と過分な言葉をいただきましたが、誹謗中傷は耳に入ってしまうと腹立たしく気分が良いものではありません。

□ ミノー速度と移動距離
 北海道の川は魚が多いので、ルアーフィッシングのミノーイングでは、「ただ巻き」でもある程度の釣果が望めます。しかし、トゥイッチング、ジャーキング、ストップ&ゴーなどのアクションを駆使することで釣果が上がることは言うまでもありません。特に、警戒心が強い大物を狙う場合にアクションが必要であり、その効果は絶大です。アクションの習得はそう難しいものではありません。多彩なアクションを身に付ければさらに釣果が上がります。しかし、アクションの動きだけを習得して、そこから先にある技術の進化を考えていない方が多くいます。アクションと付随している重要な要因も見失っています。さらに多くの魚、さらに大きな魚を釣りたければ、ミノーの速度と一回のアクションで移動させるミノーの距離を考える必要があります。これらは、リールのハンドルを回す速度と、ロッドの先端を動かす速度と、ロッドの先端を動かす距離で決定されます。問題は、「その時」の魚が反応しやすいミノーの速度と移動距離を出しているかどうかです。これがたいへん難しいところです。「その時」とは、魚の種類による運動能力の違いと、魚の活性状態に大きく関係しています。たとえば、運動能力の低い魚や低活性の魚に対し、ミノーを速く動かして一回のアクションで長い距離を動かしてしまうと、魚が興味を示さないか、ミノーを追いかけきれない状態になって、結果的に釣れない状況になります。速度や移動距離は、実際の川ではアドバイスできますが、状況次第なので数値で表わすことは非常に難しいことです。ミノーイングでは、自分の中で確立した定義に基づいて、ミノーの速度と移動距離を調整して釣っています。ハンドルの回転速度、ロッドの移動速度、ロッドの移動距離の3動作を、単独や各動作を組み合わせて、工夫して釣ることをお奨めします。釣った実績を伴った経験から体得することが大切です。

□ 十勝川の特徴
 十勝地方は10月中旬を過ぎると気温が一気に下がり始め、11月中旬から最低気温が連日で零下になると、水温が下がってほとんどの河川でニジマス釣りは終わりを迎えます。その中で、気温が高い冬なら12月中旬までニジマスが釣れるのが、十勝川の佐幌川合流から札内川合流の区間です。昔ならイトウの良い時期ですが、現在の十勝川のイトウは絶滅寸前の悲しい状況で、わずかに生息はしているものの、狙って釣るには厳し過ぎます。この区間で冬までニジマスが釣れる要因には、水温と魚の移動が大きく影響しています。この区間にはニジマスが多く棲息する、佐幌川、美生川、然別川、音更川、札内川などの支流がいくつも流入しています。各支流は十勝川本流に比べて水温の低下が速く、真冬にはわずかな流れを残した程度で川は凍りつきます。各支流の下流域に生息するニジマスは水温の低下に伴って水温の高い十勝川へ移動します。十勝川は真冬でも表層は凍ることはあっても水量が多く十分に魚が棲める環境です。実は、佐幌川合流から札内川合流の区間で、ニジマスの数が一番多くなるのは晩秋から早春の時期になります。数は多いですが、さすがに初冬ではニジマスが反応する限界近くの水温なので、たくさん釣れるわけではありません。しかし、水温が低い分小さい魚の反応が鈍いので大物の期待が高まります。ニジマスは流れの緩やかな深場におり、広い十勝川でもポイントが見つけやすいことも有利です。晩秋から冬にかけても、ニジマスを釣りたい方にはお奨めします。ただし、まずは寒さと戦わなければなりません。真冬を過ぎて各支流がまだ雪や氷におおわれている頃、再び十勝川にニジマスの好機が訪れます。そして、雪解け増水が始まると、産卵の移動とも連動して、ニジマスは再び各支流へ戻って行きます。

□ 大増水 
 2011年9月1日から6日にかけて、北海道の西側を台風12号が通過し、5日からは東側を通過する台風13号も加わって、北海道は東西を台風に挟まれてしまい、各地で記録的は大雨が降り、十勝地方もほとんどの川が大増水しました。中でも音更川は、下流の一部の堤防が決壊するほど水位が上がり、上士幌町の糠平ダムからの放水量は1981年以来30年ぶりの高水準を記録しました。川はここまで増水してしまうと、破壊されてしまいます。流れている川の位置自体が完全に変わってしまうことがあります。流れている位置に変化が無くても、カーブの度合い、深さ、川底の形状や底質などが変化することもあります。最悪なのは、長時間にわたって大量の水が流れることにより、川が直線化して、川底が平坦になってしまうことです。川底が荒らされて水生昆虫や水生植物の生息も心配されます。国土交通省「川の防災情報」の観測点で川底の高さが変化すると、今まで判断できた水深が全く分からなくなります。音更川に限らず大増水した川は、増水が治まった後にポイントを確認するために釣り回るしかありません。ダメになったポイント、生き残ったポイント、新たにできたポイント、いろいろあるでしょう。自然には勝てないと諦めるしかありませんが、できるだけ川が破壊されていないことを願っています。

□ ニジマスの実績
 ある釣りのサイトでで、ニジマスの実績を紹介されてから質問や問合せを多くいただいています。良い機会と思い、この際ニジマスの実績を公表します。2011年8月17日現在、北海道でニジマスは80cm台を10匹、70cm台を22匹釣り上げています。最大は85cmです。80cm以上はミャク釣りで4匹、ルアーで5匹(内1匹は湖ボートトローリング)、フライで1匹です。70cm台は概ね3釣法同じ程度の割合ですが、フライの割合が少し多くなります。60cm台は数えたことはありませんが毎年それなりに釣っているので、釣り歴からかなりの数になると思います。70cm以上はほとんどを川で釣っています。話を変えます。学生の頃から20年位は完全な大物志向で、大物ばかりを追い求めて北海道の各地を釣り回りました。まぐれで釣れたと言われたくなかったので、イトウは1m以上、ニジマス・ブラウントラウト・アメマスは80cm以上の合計4魚種を1魚種最低3匹釣ると目標を決めて達成しました。達成後は大物志向の熱は冷めるのかと思っていましたが、冷めていたのはほんの少しの期間で、すぐに大物狙いの釣りばかりになりました。近年は大物は釣りガイドを中心に他の釣り人のためにとっておき自分は狙わないことが多くなっています。昔の自分では絶対にあり得ませんが、何故か残念とは思っていない自分が不思議です。しかし、大物を釣りたい衝動が時より沸々と湧き起こります。多分一生冷めることはないのだと思います。釣る場所の魚は全部釣りたいという気持ちは昔も今も全く変わっていません。

□ ケガ
 2011年7月、十勝川上流域で川岸の崖を登ろうとして、久し振りに滑り落ちました。その際、木の枝で顔に4箇所のキズを作り、キズが治るまで見栄えの悪い思いをしています。今まで、上流域や源流域の釣りが好きで危険な場所へも多く行き、それなりにケガをしてきました。骨折して入院するまでには至っていませんが、打撲や捻挫はそこそこに、切り傷は1回に数針の程度ですが合計で30針ほど縫っています。自分ではこの程度のケガで済んでいることを幸運だと思っています。今までのケガで一番の思い出はシイ十勝川でのことです。随分前になりましたが、今でも鮮明に憶えています。単独で釣りに行き川を遡行していると、深い淵の両側に崖がそびえ、北海道で函(はこ)と呼ぶゴルジュが現れました。高い崖ですが幅は狭いので、迂回するのは面倒だと思って崖をよく見ると、水面から4m程の高さに段差があり、それを足場にして進めると思ってしまいました。今考えるとまったく無謀な判断でした。ゆっくり慎重に進みましたが、結局は足場が崩れて深い淵へ落下してしまいました。水中への落下に慣れていたせいか、じたばたしないで足が着く下流まで流されてから立ち上がりました。意外に冷静だったなと、ほっとした瞬間に左肘に激痛が走りました。シャツが肘から手首まで裂けていて血がにじんでいます。腕まくりして確かめると、ざっくりと深い傷がありました。崖から落下した時に岩の先でえぐったものでした。すぐにタオルで止血しましたが、止血の仕方が悪いのか、思ったより傷が深いのか、血は全く止まらずにタオルはどんどん赤く染まっていきます。すると、源流域でたった一人でのこの状況に、急に強い恐怖心が襲ってきました。もう釣りどころではなく、たいへんだと思う気持ち以上に、大袈裟にも出血多量で死ぬかもしれないと思いました。その後は、とにかく必死で川を下り車まで戻って病院へ直行しました。不思議なことですが、川を下っている時にはケガの痛さは全く感じませんでした。再び痛さを感じ始めたのは、車を走らせてもう大丈夫と安心して、やっと気持ちが落ち着いてきた頃からでした。

□ 朝錬の時期
 新緑の6月を迎えると、十勝地方の平野部の川は本格的な釣りシーズンに入ります。その代表であるニジマスは、豊富なエサを食べて冬に失った体力を完全に回復し、水温の上昇と共に一気に活性が高まります。釣法を問わずに良く釣れる時期です。しかし、最高の時期は長くは続きません。地元はもちろん道内各地からニジマスを狙って釣り人が集まり、ニジマスは徐々にスレてしまい、釣り場は荒れてしまいます。さらに、人口の多い帯広市や音更町から近い川では、時期的な要因で釣れない状況が見られます。2011年の夏至は6月22日で、帯広市の日の出は3時48分、日の入は19時10分でした。夏至の時期は、朝は4時頃から釣りができて、夕方は19時頃まで釣りができます。平日でも仕事前や仕事が終わった後に釣りができます。特に朝は、2〜3時間釣りをして、家に帰って身支度を整えてから仕事へ向かう時間が十分にあります。この平日仕事前の早朝の釣りを、運動部出身の釣り人の仲間内では早朝練習を縮めて朝錬と呼んでいます。実際に釣っている人にとっては本番であり練習ではありませんが、体育会系の人間にとっては、朝練と呼ぶほうがしっくりきます。そういえば、平日夕方の釣りを夕錬とは呼びません。夕方は部活動を行う基本的な時間帯で、わざわざ夕の字は付けません。近くの川へ釣りの練習に行くことがあります。誰にも邪魔されないように平日の早朝や夕方を選んでいますが、釣り人をよく見かけます。頑張っている釣り人は結構いるものです。当然、朝も夕方も入渓されている区間はなかなか釣れません。

□ 小さな講習会
 一年に数回ですが道内の釣りクラブやサークルから釣り講習の依頼があります。メンバーが10名以下で比較的新しく設立された小さな団体からの依頼がほとんどです。小さな団体の講習会では、いつも釣りに行く仲間でお互いに気兼ねがないので、協力し合いながらスムーズに講習が進む良い面があります。しかし、緊張感や集中力がなくなってしまい、講習に悪影響を及ぼす傾向が出やすい面もあります。そこで、小さな団体の講習会では教え方を工夫しています。一つのポイントを一人で釣って、その釣りを全員が見るスタイルで講習を進めます。次のポイントでは釣り人が交代し、それを全員が行っていきます。釣っている人は、みんなが見ているので、適度な緊張感を持って真剣に釣りをしてくれます。見ている人は、自分と他人の釣りを比較させて、じっくり観察し考えることが勉強になります。そして、ポイント毎に釣れた場合も釣れない場合も、何故そうなったかを解説しアドバイスを行います。参加者の中でキャスティング技術が低いなど問題になる人がいた場合は、その人だけ別のメニューを組んで講習を進めることもあります。初めて会う人ばかりで、性格などは全くわからないで教えていますが、少しでも釣りが上手になってほしいと思っています。

□ 川の中を静かに歩くこと
 源流や渓流の釣りで、絶対にしてはいけないことは、川の中を乱暴にバシャバシャ歩くことです。魚に警戒されることはもちろんですが、最悪の場合、魚はその場から移動していなくなります。釣り講習や初心者の釣りガイドでは、釣りの基本として川の歩き方から教えています。困るのはベテラン相手に釣果を求める釣りガイドの時です。長年釣りを続けて来て、経験が豊富で技術が確かで相当な釣果をあげているにもかかわらず、川の中を静かに歩かない人がいます。今までどのような釣りをしてきたのかを疑いたくなうような残念な場面ですが、今更ながら川の歩き方を教えるのは、本人のプライドを傷つけるようで気が引けてしまい躊躇があります。しかし、私の助言がたとえ釣り人に嫌な思いをさせたとしても、釣りたい人には釣るために必要なことを、信念と勇気を持って伝えています。川の歩き方もそのひとつに過ぎません。釣れる事実が釣り人を納得させてくれると思います。助言しないで釣れないことは、職業釣り師としての務めを果たしていないことになります。そして何より、釣れない釣りに終わってしまった時に感じるあの失望や憂鬱を、味あわせたくはないし味わいたくもありません。私は釣れた時より釣れなかった時のことを良く考えます。釣れない要因に、川の歩き方やアプローチが間違っていることがあります。魚と対峙する前に勝負がついていたのでは、どうにもなりません。

□ 春が来る前のニジマス
 多くの釣り人は、十勝地方のニジマスの釣りシーズンの開始時期を、春が来て暖かくなって桜が咲く5月頃からと考えていると思います。平野部に位置する川では、それは認識不足であり、実際に違います。平野部では、川に張っていた氷が落ちて水温が5℃位に上がった頃から、周りの雪が融け出して低水温の雪解け水による増水が始まるまでの期間でニジマスが釣れます。今年(2011年)の十勝地方は、雪が少なかったので3月中旬頃からニジマスが釣れている川がいくつかあります。冬の間に食べる物が少なかったニジマスは、飢えているので低水温でも反応します。さらに、低水温では小さい魚は動けずに反応が鈍いので、釣れる魚は良型が期待できます。決して万全な体調ではなくファイトに物足りなさはあります。厳しい釣りになることも多くあります。しかし、冬の間をずっとニジマス釣りを辛抱してきた釣り人にとっては、狙ってみる価値の高いすばらしく楽しい釣りです。晴れた気温の高い日の昼頃が狙い時です。十勝地方以外でも北海道には春まで待たなくてもニジマスが釣れる川があります。寒さに負けないで、寒さに惑わされないで、釣りに行きましょう。

□ 川の防災情報−2
 時々、十勝地方の川に釣りに行きたので、現在の川の状況を教えてほしいという問い合わせがあります。川はあまりに増水していれば釣り自体ができません、あまりに減水していれば魚の活性が低くて釣るのが難しくなります。遠方から来る釣り人が、川の状況を知りたい気持ちは十分に理解できます。しかし、十勝地方の川の状況を全て把握することは不可能であり、知らせた直後に大雨が降り状況が一変することもあり、責任が取れないので回答はしていません。問い合わせには必ず、私が行っている水位の確認方法を伝えています。川の水位は国土交通省のホームページの「リアルタイム川の防災情報」で確認することができます。実際に釣りに行って自分が体験した水位や、私のホームページの釣果情報の釣行日の水位を調べておいて、釣りに行く前日の水位と比較すれば、水位の状況が分かり、釣れるかどうかを判断するための重要な要素になります。ただし、濁りの程度がわからないのが欠点です。川の水位観測所に監視カメラが設置されていて、映像で確認できれば最高ですが、その情報を必要とするほとんどが釣り人だけでは、カメラの設置は到底無理な話です。濁りの程度は、その川の濁りの入り方や治まり方を何度か経験して予測するしかありません。もう一つ欠点があります。川の水位は標高で示されています。増水や河川改修で水位観測点の川底の位置が変化した場合、今までのデータは役に立たなくなります。そうなると平水の時の水位をまた調べなければなりません。

□ 放流
 もう10年以上経ちましたが、西暦2000年を記念して自然に関係する何かをしたいと思い、ニジマスの放流を行いました。放流先は、私にとって特別に苦労した思い出がある新得町トムラウシ周辺の十勝川上流域です。養殖魚を手に入れて放流するのではなく、今までに他の川で何回か行った放流と同じに、、自分で釣ったニジマスを放流する計画です。今回は100匹を放流することにしました。釣る川は然別川上流です。生息するニジマスは天然魚で数が多く、トムラウシまでの距離が近くて移動時間が短くてすみます。ニジマスを傷つけないように、カエシを潰したハリを使ってミャク釣りで釣り、網に入れて川で生かしておきます。ニジマスの数が揃ったら、クーラーボックスを水槽の代わりにして、電池式の酸素ポンプで空気を補給し、魚を移して運びました。1回に25匹を4回に分けて放流しました。100匹の予定でしたが、結局、あと数日かけて合計200匹を放流しました。その後はずっと、十勝川上流のある流域でニジマスを釣ると、放流した魚の子孫と思えて、顔がほころび、いとおしい気分にひたれます。放流には苦労しましたが、一生続くうれしい気持ちを味わっています。今後も機会があれば同じやり方で放流したいと思っています。協力いただける方を求めています。

□ 不本意
 長年、釣りたい魚を決めて狙って釣りを続けています。そのせいか、狙っていなかった魚を偶然に釣ってしまった時は、うれしさや感動はありますが、その後に必ず本意ではない思いが頭をよぎります。特に、何回も経験した川で狙っていなかった魚の大物を釣った時は、その思いが増大します。その魚が釣れる可能性を予測できなかった事実を考えると、自分の釣りの精度の低さがあばかれたようで、素直に喜ぶことができません。また、偶然に釣った魚は、たとえ経験や知識や技術があったから釣れたとしても、それらに関係なく、その場にいれば誰もが釣れたのではないかと思ってしまいます。釣ったことに感謝して喜んでおしまいにしてしまえば良いのでしょうが、どうしてもそれができません。そこまでシビアに釣りをする必要は無いのかも知れません。しかし、自分の釣りへのこだわりがそれを許しません。これが自分の釣りのスタイルです。川の釣りは、魚、川、ポイントなどの全てを自分が選べる釣りです。妥協せずにどのような状況にも対応できるように努めています。それがかなわなかった時、自分は今まで何を考えて釣ってきたのかと思い情けなくなります。

□ イクラの開発
 2000年に、川釣り用のイクラをアメリカのメーカーから輸入している会社から、イクラの調査と新商品開発への協力の依頼がありました。内容は、当時販売されていた数種類のイクラを使って釣りをして、ニジマス、ヤマメ、オショロコマの3魚種を対象に、それぞれのイクラの釣れ方に順番を付けます。そして、その結果からより釣れるイクラとはどういうものなのかを考えていくものでした。私一人では判断がかたよってはいけないので、延べ10人ほどの釣り人に協力してもらいました。イクラは商品により、色、粒の大きさ、匂い、硬さ、オイルの量、味付けがそれぞれ異なります。調査が進むと、それぞれのイクラの効果と共に、エサ持ちのなどの使いやすさの評価も加わって、魚種別にランキングがはっきりしていきました。そして、調査結果から対象魚全てに効果があるイクラの特徴をまとめました。翌年にはメーカーが数種類の試作品を完成させました。今度は、試作品を使って釣り、短所や長所の結果と改良点をまとめて最終報告としました。さらに、商品の信頼性や販売力が向上するように、どのサケの卵なのか、対象魚の種類、何粒入っているのか、匂いや硬さはどの程度なのかを瓶のラベルに記載するように進言しました。その結果完成したのが、ATLAS・SILVER HARD・シルバーサーモンイクラです。今でもイクラで釣りをしてアタリがいまいちの時は、当時を思い出して、もっと釣れるイクラはないかと考えることがあります。

□ ヒグマ
 北海道の川や湖で最も危険な野生動物はヒグマです。ほとんどの地域で、自治体の中心都市から車で30分も走るとヒグマの生息域に入ります。2010年6月5日に、十勝地方で山菜採りに行った女性がヒグマに襲われて亡くなりました。現場は帯広市の中心部から25kmほどしか離れていない雑木林でした。ヒグマ対策は、音を出して人間の存在を先に彼等に知らせることが最も重要です。昔から行っているのは、鈴を鳴らし、ホイッスルを吹き、爆竹を鳴らすことです。最近では携帯用の防犯アラームも利用し、時々あの甲高い電子音を鳴らしています。特にヒグマが多い地域へ行く時は、襲われた時に生き残る最終手段として、ナタや熊撃退スプレーを携帯します。携帯すると丸腰よりはるかに安心感があります。しかし実際は、ものすごい恐怖の中で身長2m体重300kgに達するヒグマを相手に、ナタで立ち向かえるとは考えていません。熊撃退スプレーは噴射距離が5〜6mです。近寄ってくるヒグマとの距離を冷静に判断し、正確にヒグマの顔をめがけて噴射する自信はありません。ヒグマに襲われたら、まず命はないと考えています。