□ 流れを読む
川で魚がいるのに釣れない。色々な原因があります。その中で多くの釣り人は魚が潜む流れが読めていません。はじめから流れを読んだ釣りをしていないのか、流れを読んでいてもできていないのか、状況ははっきりしませんが結果として、釣っている位置が核心域から「ずれ」ている光景をよく目にします。川の釣りではこの「ずれ」は釣果に大きく影響します。経験を積めば、魚が釣れるポイントの良し悪しはだいたい分かるようになります。しかしこれは、単なる出発点にしか過ぎません。大切なのは流れを読んで、ポイントの中から正確に魚が潜むコースを見極められることです。どんなに高性能なタックルを使用しても、どんなにキャスティングを始めとする釣りの技術が高くても、釣っているコースに魚がいなければ何の意味もありません。川面を狙う釣りでは、ドライフライや毛鉤が魚が泳ぐコースを少しでも外したら全く反応しない状況を知っています。水中を狙った釣りでは、魚の目の前にルアーやエサを運ばなければ全く反応しない状況を知っています。多くの厳しい状況を経験して、流れを正確に読むことがいかに重要なのかが身に沁みています。川で流れを狙う「線の釣り」をする時は、魚が潜む流れを細かい「流れの筋」の集合としてとらえています。流れが確認できる規模の川である限り、どんな釣法でも「流れの筋」の幅は最大10cmと心掛けています。いくつもの筋が複雑に入り組んでいても、流れを読んでとにかく一本に絞り込みます。その筋で満足できる釣り方をして魚のアタリがなければ次の筋を狙います。いつでも選んで信じた筋が正しかったのかを確認しながら釣りをしています。
毎年12月末には、十勝川の下流域は凍ります。河口から約4km上流の十勝河口橋付近では、人が乗ってもびくともしない位に氷は厚くなります。その氷に穴を開けて、釣り糸をたれると、1月中旬まではキュウリウオ(以降キュウリ)が、その後はチカが中心に釣れます。時にはコマイも交じります。いずれも海の魚です。私はこの釣りが大好きで、市販の竿では満足できずに、竿を自分で作っているほどです。雪が少なく、車で川の近くまで行くことができ、魚がたくさん釣れる時は、河川敷は釣り人の車で一杯です。200人以上が凍った川の上で釣りを楽しんでいます。ある年など、ライトバンのラーメン屋台まで出ていました。このように説明すると、いつもたくさん釣れると思われるでしょうが、決してそうではありません。確かに、氷に乗れた直後のキュウリや、釣れ始め直後のチカは、ものすごく釣れます。キュウリを例にすると、普通は釣果が落ちる日中でも、氷の穴に仕掛けを入れた途端にアタリがあり、4本鉤に2匹や3匹も珍しくありません。30cm位の魚の入れ食いはとても楽しくて興奮します。100匹位は当たり前に釣れます。しかし、残念ですが良い時期は長く続きません。キュウリもチカも、盛期が終わると、日・天候・時間帯・潮の干満・海の荒れ具合・ポイントによって、釣果にかなりの差がでます。何せ海にいる魚ですから、川に入ってくれなければ、どうしょうもありません。昨日は大漁今日はゼロや、半日で数匹、夜明けから2時間釣れその後ゼロなど、厳しい状況となります。過去のデータから、魚が川に入る日や時間帯を予測していますが、いつも上手くいくと限りません。難しいものです。そんな時は寒さで体の芯まで凍えながら、釣れない憤りで頭の中だけは熱くかっかしています。
□ がっかり
目標や期待を持って川釣りに出かけて、みごとに裏切られることがあります。その中で、川の情報不足や予想に反したことを紹介します。
・ 雪解け、台風、大雨後の増水や濁りがおさまっていなかった。
・ 増水はおさまっていたが、増水の影響で川筋が変わったりポイントが破壊されていた。
・ 雨不足で予想以上に水量が減少していた。
・ 予想以上に高い水温や低い水温だった。
・ 河川改修で、ポイントが破壊されていた。
・ 入渓者や入渓跡が予想以上に多かった。
・ 函などがあり遡行ができなかった。
・ ダムの放水や放水停止により水位が急激に変化した。
・ 少しの雨でもすぐに増水して濁ってしまった。
・ 上流で河川工事があり急に濁りが入った。
・ 人や雑誌、新聞などの情報を信じて行ったのに釣れなかった。
・ 渓相はすばらしいのに魚がいなかった。
□ 知床
2004年1月16日、日本政府が「世界自然遺産」に「知床」を推薦することを正式に決定し、国連教育・科学・文化機構(ユネスコ)世界遺産委員会事務局に推薦状を提出するとしたニュースが流れました。私は、砂防ダムだらけの川の知床が、世界自然遺産として本当に認められるのかと心配しました。知床へは25年ほど前から釣りや観光で訪れています。車で行ける名前の付いた川は全てに竿を出しています。オショロコマがたくさん釣れます。魚は濃いですが、川はとにかく砂防ダムがすごく目立ちます。初めて訪れた時、その多さに愕然としました。手つかずの自然が残っているとばかり思っていたからです。
2004年7月20日〜26日に、世界遺産委員会の諮問機関である、国際自然保護連合(IUCN)の調査が入りました。調査結果には、心配した通りの、砂防ダムの問題がみごとに指摘されました。推薦地内にある50基の砂防ダムすべてに魚道を設置し、数基の撤去を求められました。その指摘に対して関係当局(環境省・林野庁・文化庁・北海道)は、魚道は必要なものだけ設置の用意がある、撤去は困難と答えました。驚かされる残念な回答です。誰かにどうしてもかなえてもらいたいお願いをして、相手が条件次第でかなえようと言ってくれて、その条件が難しくなければ、条件をのむのがあたりまえではないでしょうか。砂防ダム全基に魚道を設置することは本当に困難なのでしょうか。いらない砂防ダムを撤去することは本当に困難なのでしょうか。自然に対する考え方を改めれば、可能だと思います。何より世界自然遺産なのですから、自然のままに限りなく近づけるのが当然です。予定では、2005年2月にユネスコ世界遺産センターに報告書が提出され、同年7月に世界遺産委員会で、知床の登録の可否が決定されます。静かに成り行きを見守ろうと思っています。
□ 認識不足
道外のかなり多くの釣り人と道内の一部の釣り人は、サケについて間違った認識を持っています。それは、禁漁河川でもリリースすれば、サケは釣って良いというものです。北海道の河川で、サケ・マスは、「有効利用調査」が実施されている、忠類川、元浦川、茶路川、浜益川の4河川を除き、通年全面禁漁です。規制はたいへん厳しく、釣ろうとする行為が完全に違法となります。誤って釣っても、状況や逃がし方次第では、違法または漁業権への侵害として罰せられます。では、どうして、リリ−スすれば釣って良いなんて思っているのでしょうか。誤解が多い道外の釣り人の話を聞いてみると、その要因のひとつに、釣りのホームページが関係していました。北海道の釣りのホームページの一部に、禁漁河川でサケを釣ったという内容が載っています。中には、サケを手に持って記念写真をとっているものさえあります。リリースしても、間違いでも、釣った行為が違法になることが分かっていません。当然、違法行為なので掲載は有り得ません。また、密漁を多大に誘発する危険性があります。掲載している側がこのようなに低レベルな認識ですから、状況に詳しくない方は、それを見て誤解してしまいます。サケ・マスを中心に禁漁魚は、扱いに関して特に慎重に対応する必要があります。
□ アメマスの時期 <2004.12.15>
十勝〜釧路までの太平洋沿岸に注ぐ川の降海型アメマス(以降アメマス)は、一般的に8月頃から海から川へ遡上します。9月には、釣るには十分な数のアメマスが遡上しています。この時期のアメマスは、産卵前で体は丸々と太り、活性は非常に高く、すばらしいファイトを見せてくれます。また、初期に多く遡上することが知られている大型の70cmクラスを狙うならこの時期が最高です。しかし、このすばらしさを十分に判ってはいても、この時期にアメマスを本命にした釣りには行っていません。それは、釣れる時期が残り少ない、ヤマメやオショロコマやニジマスを狙ってしまうからです。道東はお盆過ぎから寒さが加速します。秋はあっという間に過ぎて行きます。ぐずぐずしていたら、すぐに寒くなって、夏の間にエサを食べまくって大きく育った渓流魚は釣れなくなります。どうしても、渓流魚への執着(未練)が勝り、アメマスは寒くなってからでも釣れると自分に言い聞かせてしまいます。また。アメマスが遡上する、渓相に変化の少ないゆったりした流れの川よりも、変化に富んだ源流や渓流が好きということもあります。
10月になり、さらに渓流魚の季節が終わったと確かめた後に、アメマス釣りを始めます。この時期では大半が産卵後で、体は細り、すばらしいファイトはなかなか望めません。連日、釣り人が入渓するので、大型魚は警戒してなかなか釣れません。そんな時、最高の時期に一日でも釣っておけば良かったと後悔します。そして、来年こそは最高の時期に、コンディション抜群の大型アメマスを狙おうと思います。しかし、今年も渓流魚に夢中になってしまい、時期を逃してしまいました。また来年です。
□ 開拓
ここ数年、晩秋から初冬にかけて時間を見つけては川の下見を行っています。この時期は、紅葉後の木々の葉が全て落ち、林道から川の見通しがききます。水量も適当で川の様子が良く確認できます。また、雪が降る前の林道は通行も楽です。下見は、全く釣行したことのない川ではなく、釣行経験があり釣果のあがった川の、未知の区間や支流を行います。つまり、新しいポイントの開拓が最大の目的です。また、台風での増水後の川の形状確認を目的として行う場合もあります。いずれも十勝管内の川が中心です。竿を出すことはなく、5万分の1地図と双眼鏡で車から渓相を確認します。見えにくければ車を降りて川まで行きます。良い渓相であれば、地図に記録し、次の年の釣りに良い時期に釣行します。まれに、産卵期の大型魚を確認した時などは、来年が待ち遠しくてたまりません。実際に釣って十分な釣果があがれば、知るポイントが増えることになります。知らなかったポイントは、以外に多くあります。このようにして開拓したポイントで特に上流域は、まだほとんど人に知らせていません。林道がある以上、人跡未踏ではありませんし、知っている人もいるでしょう。しかし実際に、釣り人は皆無に等しく、魚は非常に多く棲息しています。私自身、できればそっとしておきたいと思っています。川の環境がこれからもっともっと良くなって、近場でたくさん魚が釣れることを願います。この流域でしか釣れないようでは、北海道もおしまいです。
□ 上手の基準
魚をたくさん釣るにはどんな条件が必要でしょうか。第一は環境です。北海道の源流ではオショロコマが入れ食いの場所があります。ロシアのリバーフィッシングツアーでは、大型魚が多く釣られています。いずれも、人に知られていないか、人があまり入らない川に、警戒心の薄い魚が数多く棲息している状況です。時期され間違わなければ、釣り人のウデにあまり関係なく魚は十分に釣れます。次が釣法です。たくさん釣りたければ、自分の好みの釣りに固執せず、状況に応じて、色々な釣法の中から一番釣れる確立の高い釣法を選ぶことです。最後に釣りのウデ、つまり経験と判断と想像と技術に行き着きます。以上のように、たくさん釣るためには、環境や釣法に依存される部分が大きいのが現実です。よって、たくさん釣ることが即ち、釣りが上手だと決めつけるのは安易すぎます。それでは、釣りが上手とはどのように判断すれば良いのでしょうか。やはり、釣りの「ウデ」です。重要なのは、全く同じ釣法で優劣をつけるということです。フライフィッシングにはドライとウエットがあります。ミャク釣りには大オモリとゼロ釣法があります。大枠では同じ種類でも、実際は異なる釣法といえるものが多くあります。よって、ここでいう釣法とは、細分化されたレベルで同一と考えなければいけません。そして、釣法同士には、間違いなく、釣れやすい、釣れにくいの差が存在します。この釣法の差で生じる結果の差で、釣りが上手か下手の判断は当然できません。これは、ひとつの釣法に打ち込む多くの釣り人にとっても、納得できる条件です。釣りが上手とは、「限りなく同じ環境や状況で、細分化された同じ釣法を以って、他の釣り人が釣れない時に、釣れること」だと考えています。簡単にいうと、人が釣れないポイントにすぐに入り、同じ釣法で、釣ってしまうことです。これができる釣り人は、普段から人より多く釣りあげているでしょう。また、大物志向では、何人もが狙って釣れなかった大物を釣りあげているでしょう。しかし稀に、どんなに上手な釣り人が、どんなにがんばっても釣れなかったポイントで、初心者が同じ釣法で簡単に釣ってしまうことがあります。これが釣りの不思議であり、奥が深いところでもあり、非常に理不尽なところです。
□ 登山とキャンプ
会話の中で「私は釣りが大好です」と言うと、「アウトドア派ですね」と決め付けられます。続けて「登山やキャンプも好きですか」と聞かれると、「好きではありません。しかし、します。」と答えます。皆さん「どうして」と言いたげに、腑に落ちないような顔をしています。登山やキャンプはボーイスカウトや学生時代に数多く経験しています。特にキャンプはものすごい数です。その頃は純粋に登山やキャンプが好きでした。しかし釣りにのめり込んでからは、釣りのためにしか登山やキャンプをしなくなりました。それは、どうしても必要だからです。目的地が山奥の源流で、川沿いに遡行ルートがないなら登山をして向かいます。日帰りが無理だったり、近くに宿泊施設がないならキャンプをします。今はこのように選択肢がない状況でない限り、一日の釣りが終わって、テントを張り食事を作る時間があるなら、その時間で車を走らせて麓の旅館やホテルに泊まります。ゆっくり温泉に入って、お酒を飲んで、おいしい物を食べて、敷いてある布団に寝たいと思います。何もしなくても全てが用意されています。私にはこれが一番です。できるけれど、したくないことが年々はっきりしてきました。
2004年の秋に、目の不自由な方から、釣りの経験は全くないけれど、自然の川で天然の魚を釣ってみたいという依頼がありました。目の不自由な方に釣りを教えるのは初めてのことで、多少の戸惑いはありましたが、どうにかなると考えて引き受けました。釣り方はノベ竿のミャク釣りにしました。ミャク釣りなら経験できる釣りの要素が多いと考えました。川の選択にはいろいろな条件がありました。大きな石がなく歩きやすい川原。仕掛けを流しやすい流れの緩い川。広いポイントに魚が溜まっていて移動しなくてよい川。仕掛けが木の枝に絡まない開けた川。根掛かりしづらい川底。風の影響を受けにくい川。これらの条件にもとに川を選びました。対象魚は、手に魚のアタリが十分に伝わり遅いアワセでも釣れるニジマスを選びました。ウグイも頭をよぎりましたが、釣り師のプライドで却下しました。竿は、オモリが川底を流れている振動や、魚のアタリが伝わりやすい高感度な4.5m。仕掛けは長さの調節と、仕掛けの重さを感じやすいように通常より重いオモリを使用。問題なのが教え方でした。結局は出たとこ勝負でしたが、準備として、実際に目を閉じて釣りをして、自分自身が目の見えない世界に慣れる訓練をしました。当日は良い天気でした。川に無事に到着し、竿や仕掛けに慣れるために右手に竿を渡し左手に鉤をつかんでもらって、すぐに問題が発生しました。竿先に仕掛けが絡んでいます。これでは釣りになりません。目が見えないということは、こうゆうことかと初めて分かりました。目が見えないと、竿や仕掛けを機能できる状態に保つことが非常に難しいです。これをきっかけに、目の不自由な方に釣りを教える方法がつかめました。説明と実況が必要だとわかりました。釣りの動きを説明しながら実際に体を動かして教えます。それと同時に体の動きに伴う竿や仕掛けの状態を実況しなければなりません。これらによって、全体のイメージができて、動きがまとまります。その繰り返しで動きの精度が高まります。竿の構え方から始めて、仕掛けの流し方などを順番に教えていきました。かなりの時間がかかりましたが、一通りの練習を終えて釣りを開始しました。初めから上手くはいきませんが少しずつ上達して、とうとう一人でニジマスを釣り上げることができました。とても喜んでくれましたし興奮していました。私自信はほっとしたと同時に感動しました。目の不自由な方が釣りをする場合、一人ではできないのが現実です。本当にいろいろなことが起こります。しかし、サポートさえしっかりしていれば、釣りを楽しむことができます。
□ 満足 <2004.10.13>
朝晩の気温がめっきり下がり、木々が紅葉し始めると、そろそろ渓流釣りの季節は終わりだなと、寂しい気持ちになります。そして、赤や黄色の落ち葉が川面を流れ始めてから、それらが邪魔になって釣りができなくなるまでの短い期間に、1匹でも多く釣っておかなければと焦ります。落ち葉が流れきった後は、本格的な寒さが訪れます。完全に渓流釣りの季節は終わりを迎えます。この時期、その年の現在までの渓流釣りを振り返ってしまいます。楽しい、悲しい、すばらしい、悔しい、様々な思いが蘇ります。しかし、残念な結果に終わった釣りは当然として、どんなに大きな魚を釣っても、どんなにたくさん釣っても、自分では決して満足していません。それは、釣った先から、すぐに目標を同等かそれ以上に置いてしまうからです。大物に恵まれた時や、大釣りの時の感動や興奮は十分に味わっています。その時はとても良い気分で満足しています。しかし、それが全く長続きしません。次に釣りをする時には、もっと大きくもっと多くと真剣に考えています。これは性分なので直しようがありません。渓流釣りのシーズンが終わろうとしている今、釣れるギリギリの水温まで狙います。終わったと分かれば同時に、さあ湖だ、さあアメマスやイトウの始まりだと、次のターゲット狙いに気合を入れ直すでしょう。私の釣りは延々と続きます。
ホームページを公開して以来、ガイド依頼の他に実にいろいろな釣りに関する質問を受けています。最も多いのは、釣れるポイントです。しかしそれは釣りガイドにとって、生命線となる重要なことなので、ホームページに載せている情報の範囲にとどめてもらい、ガイド以外でコアなポイントを教えることは丁重にお断りしています。タックル関係の質問もあります。ノベ竿・ロッド・リール・ライン・ルアー・フライなどの、各魚種に応じた製品や種類の選択のアドバイスを求められます。実際に自分が現在までに使用してきたメーカーのタックルを基準に答えています。仕掛けの仕様や、回答するのがとても難しい釣り方の質問もあります。本当に様々です。印象に残る質問を少し紹介します。「ヤマメやニジマスが好む水速は何km/hですか」。ミャク釣りで、「零釣法と同じエサの動きを、大オモリでできますか」。ルアーで、「ルアーにアクションを加える場合、どんなアクションが一番効果がありますか」。フライでは、「ルースニングでどんな魚にも効果のあるフライはどれですか」。また、「釣りガイドをするにはどうしたらよいでしょうか」というのもありました。これらの質問から、身についている感覚的なものを人に伝える難しさを知ったり、そういう方法もあるなと感心したり、自分の知識の再確認をしたり、自分では思いもつかなかっただろうと考えさせられたりと、勉強になることが多いものです。しかし、ご自分でやってみてください、ご自分で考えてください、釣具店に聞いてください、入門書を読んでくださいと言いたくなるものもあります。これからも、質問はあると思います。簡単な質問や、現在まで受けた質問と同じであれば苦労しないでしょう。しかし、難しい質問も出てくるでしょう。できる限り回答していきたいと思います。最後に、質問がある場合、メール・電話・FAXいずれであれ、礼儀としてあいさつや自己紹介(姓名や住所)はしてほしいものです。やはり、質問内容だけというケースには答えたくないものです。
□ 回収
釣り場に、釣り糸や釣具のパッケージや空のエサ箱などが本当に多く捨てられています。ちょっと手を伸ばせば届く木の枝に釣り糸がぶら下がったままになっていたりします。残念ですが、それらは全て確実に釣り人の仕業です。放置された釣り糸が、野鳥の脚や口ばしに絡んでしまい、最終的にその命を奪ってしまう被害が多いと聞きます。釣り場には一切の人工物を残さないで帰るのが常識であり、必ず守らなければいけないことを釣り人は十分に理解しています。しかし、現実は悲惨な状況です。とにかく、絶対にゴミは全て持ち帰りましょう。ルアーやフライや鉤に結んだ釣り糸の余り5mmでも持ち帰ることです。そして、ゴミを見つけたら、できるだけ拾ってください。何で他人が捨てた物をと思うでしょうが、きれいな環境は反対に汚くできないものです。しかし、釣りをする上で、どうしても避けられないこともあります。釣り糸が木の枝に絡んだり根掛かりして、回収不能になることです。木の枝へ絡みは、キャスティングやアワセそこなった時によく起きます。周囲に十分注意することが防止の第一です。自分の上方や後方の空間に気が回っていないことが案外多いものです。キャスティングが未熟な方は、障害物のない広い場所でとにかく練習してください。絡まって、最終的に切った釣り糸やフライ、ルアー、鉤などはできる限り回収してください。根掛かりの対策としてはまず、釣りに支障のない範囲でできるだけ強度の強い釣り糸を使用することです。回収の確立が高くなります。また、釣り糸の傷やヨレを時々点検して、弱った部分を交換しておくことも必要です。ルアーの場合、回収器もあります。根掛かりしてしまったら、面倒がらずにとにかく竿や自分の位置をいろいろと変えてはずします。つまり、釣り糸の角度を変えることです。時には対岸に渡ってはずすこともあります。どうしてもはずせない場合、残念ながら釣り糸を切るしか方法がありません。ルアーやフライや鉤だけが残ってしまう場合もありますし、釣り糸が途中で切れる場合もあります。こうなっては、残った人工物が、自然に少しでも悪影響を与えないでほしいと願うしかありません。前述した野鳥の被害の他にも、自然環境に放置された釣り糸やルアーやフライや鉤やオモリは、何かしらの悪影響を自然に与えていると思います。その中で気になっているのがオモリです。オモリはそのほとんどが鉛でできています。鉛といえば、ワシ類の鉛中毒死があります。北海道で越冬するオオワシやオジロワシが、狩猟後に放置されたエゾシカの死体に残っている鉛銃弾を肉と一緒に食べてしまい、中毒を起こして死んでいる例が多く確認されています。私はこの話を始めて聞いた後、釣り糸にオモリを付ける際、歯でオモリを噛み締めていたのを極力やめることにしました。そして、ノベ竿ミャク釣りの盛んな日本の川は、かなりのオモリ=鉛が放置されているのだろうと思いました。体内に入った時に死に至らしめる鉛は、水中では無害なのでしょうか。科学的なことが良くわからないのが残念です。今後、科学がさらに発展して、自然の力で完全に分解される釣具が開発されてほしいものです。しかし、いくら自然分解されるからといっても、すぐに分解されるようでは実際の釣りには使えないわけです。自然環境には一切の人工物は、捨てない放置しないという態度はいつまでも厳守すべきと考えます。
□ 釣りの車
釣り場までの移動には車を使っています。川や湖の釣りを目的とした場合、なかなか満足できる車がありません。そこで、「北海道の川や湖で釣りをするための車」の基本性能について、日頃から考えていることを話します。
1.悪路走行。北海道の川や湖では、一般道路から実際のポイントへ行ける整備された道路が少ないのが現状です。どうしても、悪路の走行が強いられます。
@.最低地上高。車の腹がつかえては先に進めません。200mm以上は絶対に必要です。一般道路と悪路で、最低地上高を調整できても良いと思います。
A.4WD。悪路走行および、凍結道や雪道にかかせません。
2.大きな車は使えません。特に背の高い車です。川や湖を取り巻く悪路は、狭く曲がりくねっています。周りの草や木も伸び放題で、時には木の枝が悪路の上方をトンネルのように塞いでいます。背の高い車は、邪魔になって先に進めません。そんな先に最高のポイントがあったりします。全幅、全長よりも全高が問題となります。
3.最小回転半径。林道を先に進むと突然決壊していたり、堤防の先が切れていたりした経験があります。Uターンできないような回転半径の大きな車は使えません。林道で5kmもバックでもどったことがあります。
4.傷に強いボディー。とにかく周りの草や木の枝で傷がつきます。私の車は傷だらけです。
5.燃費。1リットルで10kmは走ってほしいと思います。北海道はとても広く移動でかなりの距離を走ります。そして北海道の田舎では、休日にガソリンスタンドが営業していないことが多くあります。一回満タンにしたら、とにかく長く走ってほしいと思います。ガソリンでなくディーゼルでも構いません。ただしエンジン音が静かであるという条件がつきます。燃費が良くなるのであれば、フルタイム4WDでなくとも、切り替え可能であれば問題ありません。実際に乗っていますが、4WDは冬道や悪路以外では必要ないと思います。
6.乗り心地。目的の釣り場までのかなりの距離を移動しますので、体が疲れてしまっては釣りどころではありません。帰りもありますから、乗り心地が良くなくてはいけません。
7.4ドアで大人4人がリラックスできる車内空間と荷物のスペースは、絶対に必要です。
8.フルフラットになるシート。朝暗い内に釣り場に到着した時に仮眠したり、移動中に仮眠したい時に、シートがフラットになったら良いなとよく思います。
□ 残念
□ 魚がいる場所
川で魚を釣る場合、魚がいる場所を見つけることが大前提になります。そこで、魚が好む場所を説明します。
魚の外敵の一番は鳥です。外敵から身を隠すには、水中の岩や倒木や水草、川面を覆う木や草、川の深さ、表層の流れにより水中が見えないことが必要になります。
2.酸素が豊富なこと
水中に酸素がなければ魚は死んでしまいます。酸素が少なければ魚は弱ってしまいます。魚は酸素が多い場所にいます。
3.エサが流れてくること
エサを食べなければ魚は死んでしまいます。魚は水の流れが集まりエサが多く集まる場所にいます。
4.ゆっくり泳げること
この4条件をできるだけ満たしている場所に魚はいます。4条件が高い値で満たされるほど最高の場所へ近づきます。
□ ダム湖流入河川
ある釣り雑誌で、北海道の河川や湖の釣りファンを対象に、「最も好きな魚」のアンケートをとったところ、第1位はニジマスで全体の約50%を占めていました。確かに、北海道ではニジマスが数多く生息しており、美しい魚体とすばらしいファイトに魅力があり、まして、大型化しますから第1位になったのは頷けます。そして、支持した多くの釣り人は、より大きなニジマスを釣りたいと思っていることは容易に想像できます。それでは、大型ニジマスはどこにいるのでしょうか。代表的な湖や河川は、釣り雑誌や釣り場ガイドの本で散々紹介されていますので、あえて紹介するのも芸がないのでやめます。今回は、的を絞って、狙ってみる価値がある河川の特徴をひとつ説明します。重要な要因は、下流にダム湖が存在することです。今回はダム湖への流入河川に着目します。ダム湖ではニジマスは大型に成長することが知られています。そしてその中には、流入河川へ遡上したまま湖にもどらずに、そのまましばらくの間、河川に定着するやつらがいます。遡上の要因には、まず産卵があります。次に、ダム湖の水量減少。そして、夏場のダム湖の水温上昇に伴う、水温が低い流入河川へ遡上があります。このような状況下の大型ニジマスを狙うわけです。大型ニジマスが定着するには、エサの問題もさることながら、ある程度の水量と水深がない河川では無理があります。その点、多くのダム湖の場合、ダムは発電や灌漑用に水を必要として建設されますから、一般的に水量の少ない河川での建設は考えられません。そして、上流域に建設しますから、山間の河川、つまり淵や落ち込みのある変化に富んだ渓相が予想されます。これらは、大型ニジマスの生息に適した環境といえます。近年、ダムが建設された河川はありませんか。3年位経っていたら、ダム湖で大型に成長したニジマスが流入河川にもいる可能性がおおいにあります。以前は小型ニジマスしか釣れなかったとしても、現在どう化けているかわかりません。ニジマスが生息していなかったダム湖や流入河川に、新たにニジマスを放流した話は聞きませんか。同じく3年位経っていたら、期待できます。北海道にはダム湖が数多くあります。まだ大型ニジマスの存在を知られていないダム湖もきっとあるでしょう。流入河川を狙ってみる価値は十分にあると思います。
□ 地図
現在までに釣行した川の情報は、市町村単位に「5万分の1地図」を用意して、以下の内容を中心に記載しています。
・ 地図に記載のない、支流や沢や橋の名前。
・ 入渓できる箇所と、駐車可否やその場所の目印となる建物や標識。
・ 目印がない場合は、上流や下流の橋などからの距離。
・ 地図の誤りの修正。川の軌道や、道路からの距離や、支流や沢の合流点の位置や、橋の名前など。
・ 林道の通行止めの位置。
・ 地図に記載のないダム(砂防ダム)や滝やダム跡や橋跡のような魚がたまるポイントの正確な位置。
・ 川の形状。
・ 川底の形状。
・ ポイント間の距離。
・ 入渓後の川からの脱出を考慮して、崖の高さや勾配。
・ 実釣時の釣果。生息する魚種の大きさや密度。
・ 禁漁区間。
・ 自宅からの距離。
新しい川や区間の場合、釣行が終わると必ず記載しますが、良い思いをした時など、釣行していない区間が気になってしょうがありません。もっと魚がたくさんいるのではないだろうかとか、もっと 大きな魚がいるのではないだろうかと思ってしまいます。完全にはまってしまい、同じ区間で楽しめば良いものを、新しい区間に手を出して、悲しい結果となり、「二度と来るか」と捨て台詞を吐いて川を後にしたことが何回かあります。
釣り人や新聞や雑誌から良い釣果の情報があると、行ったことのない川の場合、まず地図で確認します。詳しい情報が分かる場合は、位置の確認だけで済みますが、川の名前しか分かっていなかったり、区間があまりに長い場合は予測が必要になります。地図を見てどのような区間を選んでいるかというと、まずは、渓相が変化に富み、水深が深いポイントが存在する区間に目が行きます。
・ 川が蛇行している。
・ 川幅が狭くなっている。
・ 川が崖近くを流れている。
・ ダム(砂防ダム)や滝の位置。
・ 支流や沢の合流点の位置。
以上をまず確認します。これらが組み合わされていてば、尚結構です。そして、そこに入渓できる地点を見つけます。入渓後の脱出地点や、移動距離を基本とした所用時間の予測も必要です。現地に到着して、予測通りの川の形状だと期待で胸がふくらみ、心が躍ります。あとは、魚がいてくれるかどうかです。成功しても失敗しても情報は正確に地図に記載しています。
□ 17の湖と132の渓流
夏が近づくと思い出すことがあります。大学生時代、夏休みで帰省した際は、車で北海道を駆け巡り釣りをしていました。目標がありました。それは、当時発売されていた釣りの本で、「北海道の湖と渓流」と「続北海道の湖と渓流」の目次にある、17の湖と132の渓流を釣ることでした。最初は、紹介された湖と渓流の全てのポイントを釣ってやろうと思いましたが、いくらなんでも不可能と思い、大物中心にポイントを絞って釣っていくことにしました。合計149箇所を4年で割ると、年間約37箇所、夏休みを中心に釣っていけば可能な数です。また、とにかく魚を多く釣ることも目標にして、釣法はこだわらずに、ルアー、フライ、ミャク釣りから、一番状況に合った釣り方を現地で選択することにしました。当時を振り返ると、魚の数は相当なものでした。技術もへったくれもなく、たくさん釣れてしまい、完全に釣りに飽きて、「もういいや」と思って釣りをやめることがよくありました。そのような経験をもっともっと多くしたいと思っての計画でした。最初に数の少ない湖から始めました。一日一湖のペースで順調に釣り、17の湖を完了しました。次は渓流ですが、ここで目標を変更させる状況が発生しました。目的の渓流を目指して行き、釣りを完了して次を目指しますが、移動中にもいろいろな渓流が目に入ってきます。知らない土地の知らない渓流に興味が湧かないはずはなく、渓相が良ければ気になってしまい、素通りはできなくなり、結局は釣りをしてしまいます。釣果が良ければ楽しんでしまい、悪ければポイントを変えます。どちらにしても、時間がかかります。そんなことの繰り返しですから、次の渓流へなかなか行けません。そこで、目標を、132から100にし、釣りたいと思う渓流は全て釣ることにしました。釣りたくて移動時間さえもったいないと思っていましたから、自分にとっては簡単な選択でした。4年目で100の渓流を完了しました。まだ時間があったのでさらに、残っていた道南方面の渓流の制覇を考え、少し釣行しましたが、100を完了したことで何か情熱がさめてしまい、最終目標の132を目指すことをやめてしまいました。少しもったいないことをしてしまいました。釣行を重ねた中で、今思うのは、確実に熊の出るようなところを、よく平気で一人で行ったなということです。今では恐ろしくて行けない場所を、鈴さえ付けずに釣っていました。怖いもの知らずの馬鹿だったのでしょう。熊の足跡や糞、樹木への爪痕を発見しても、恐怖はあったものの、やっぱり釣りを続けていました。実際、熊には一度も会いませんでしたし目撃したことさえありませんでした。熊の方が人間を避けてくれたのでしょうが、自分は熊には一生会わないのだと思い込んでいました。しかし、32歳の時にとうとう熊に会ってしまいました。会うというより目撃です。新得町トムラウシの十勝川で川の左岸の崖沿いのカーブで釣りをしていた時、同じ左岸の30mほど下流側で「ガサガサ、ザザー」と物音がしました。振り返ると、崖を黒い物体がかなりの速さで駆け登って行きます。小さめの熊でした。多分、崖を降りてきて、熊が先に私に気づきあわてて逃げたのでしょう。恐怖感はなかったものの驚きました。熊がもっと多かった頃に無防備で釣りをしていても全く会わなかったものが、今になって会うとは不思議なものだと思いました。現在、132の渓流は制覇が完了しています。その中には毎年釣行する渓流もありますし、あれ以来全く行っていない渓流も多くあります。時間があれば、行ってみたいなと思っています。
□ 禁漁2
魚類の保護や養殖のために「区画漁業権が設定」されている湖や河川では、その区画内では、禁漁期間に禁漁魚類を採捕すると、罰則が適応されます。では、禁漁魚種以外を狙っている場合、罰則はあるのでしょうか。たとえば、ニジマスが禁漁魚種に指定されている湖で、アメマスを狙う場合です。区画漁業権の設定をしている漁業者(管理者)の多くは、北海道では各地方自治体です。そこで、十勝管内の各自治体に確認してみました。統一した見解は、釣りはしてほしくないが、釣り人に禁漁魚種以外を狙っていると言われれば、規制はできないそうです。間違って釣れてしまったら、「魚を水からあげずに、網ですくったり、魚に手を触れたりせずに、魚を傷つけずに速やかに鉤をはずして逃がしてください」ということでした。この処置を守らなければ、即逮捕です、と説明した自治体もありました。また、逃がすからといって、禁漁魚種ばかりを釣ると、漁業権の侵害として罰せられる場合もあるそうです。実際問題として、上記の処置に違反せずに、魚を逃がすことは非常に難しいと思います。そして何より、特定の魚種だけを正確に選んで釣ることが可能でしょうか。仕掛けや餌をどんなに工夫しても、サケ科魚類の仲間では絶対に無理です。また、明らかにコイを狙っている人でも、吸い込み仕掛けで練り餌を付けた仕掛けに、ニジマスが絶対に掛からないとはいえません。残念ですが、結局、釣りをしない方が賢明ということになります。
□ 禁漁
北海道の河川でのサケ・マスの釣りは、「有効利用調査」が実施されている、忠類川、元浦川、茶路川、浜益川の4河川を除き、通年全面禁漁です。規則はたいへん厳しく、サケ・マスを採捕しょうとする行為そのものが禁止されおり、リリースしても犯罪となります。極端にいえば、サケ・マスが遡上している河川で、サケ・マス仕様のタックルを持って川原を単に歩いていただけでも逮捕されます。では、ニジマスやアメマスを狙っている時に、サケやマスが掛かってしまったらどうなるのでしょうか。関係方面に尋ねてみました。このような場合の処置に、規則上の記述はないそうです。誤って掛かった場合は、「魚を河川から上げずに、魚に手を触れずに、速やかに鉤をはずして逃がしてください」ということでした。実際に、魚に手を触れずに鉤をはずせるかどうかは難しいところですが、このような見解でした。また、掛かっているところを監視者に目撃された場合、それが過失であっても、逮捕されるおそれがあるそうです。サケ・マスの遡上河川での釣りには、十分な注意が必要です。
□ 粘り
釣りで、「粘りが必要」とか「粘った結果釣れた」とよく言います。この「粘り」を、単純に時間をかけて釣る、と考えてはいけません。確かに、時間の経過で自然状況が変化して、魚の活性が高くなる場合があります。河口付近で潮が動き出したり、夕マズメの時間が近づいてきたり、水温が変化してきたり、などの状況です。また、魚の習性で時間がかかる場合もあります。湖で魚の回遊を待つことや、遡上魚の遡上を待つことです。しかし、重要なのは、その状況を予測できること、判断できることです。予測や判断の結果、必要な時間が発生しただけのことです。自然状況が変化しない時に河川で魚を釣る場合、狙った流れに正確にルアーやフライやエサを流せているのか、それらの選択に間違いはないのか、魚が反応するアクションをちゃんと加えているのか、魚が潜む流れを見落としてはいないか、などを考えて実行する。それが重要であり、そのために時間が必要だったに過ぎません。ルアーでもフライでもエサでも、魚がいるポイントを流せず、魚の興味を引かないアクションばかりやっていたのが、何十回かのうちに、たまたま、それらが魚の目の前を良い動きで通過して、魚が食いついただけの話を、粘ったから釣れたと考えずに、一投目で意識してそれができれば、一発で魚を掛けていたなと考えることが重要です。つまり、自然状況の変化を予測せず、魚の存在を感知できずに、何の創意工夫もなく、単にダラダラと釣りしてはけないということです。釣りはそれほど単純なものではありません。
□ 推測 <2004.5.30>
ここ数年、十勝で釣れる大型ニジマスの数が多くなっています。状況を把握している十勝に限定し、帯広の気温を基礎にして考えてみました。まず、気になったのは地球温暖化です。平均気温が高いということは、単純に、河川でも一年の中で水温が高い期間が長いことになります。魚にとって、エサを食べられる期間が長くなりますから、当然成長すると考えました。そこで、過去10年間の帯広の平均気温を調べました。1994年から、7.6℃、7.1℃、6.2℃、6.8℃、6.6℃、7.3℃、6.7℃、6.0℃、7.0℃、6.4℃です。予想に反して期待した高気温化の傾向は見られませんでした。そこで、釣りの見地から、ニジマスがエサに反応する4月から10月末までの平均気温を調べました。1994年から、14.8℃、13.7℃、12.7℃、13.0℃、14.2℃、14.8℃、14.7℃、13.6℃、13.9℃、13.2℃です。特徴として、1998年から2000年にかけて、14℃以上が3年連続しています。次に、ニジマスの寿命を調べると、6年から9年で自然河川で6年位、エサが豊富な場合、3年で37〜49cmになることが分かりました。つまり、60cm以上は、4歳以上となります。すると、ここ数年に釣れた大型ニジマスはこの気温の高い3年間で生まれたか、若い時期を過ごした魚ではないかと考えられます。以上をふまえて、専門家に聞いてみました。
養殖業者の方から、生まれて2年位までの間に、何かの拍子でエサを沢山食べて大きくなったニジマスは、獰猛になり仲間を蹴散らしてまでエサを食べて、さらに大きくなると聞きました。水産試験場の方からは、養殖場の快適な環境で育ったニジマスは自然のものより成長が早く、かつ、摂餌活性が高くなり、放流した場合、天然産よりもエサを先に多く食べてしまい、そのエリアで天然産にとって代わった事例がアメリカで報告があると聞きました。つまり、これらを総合すると、生まれてから2年間ほどの間に十分なエサを食べたニジマスは速く大きくなり、獰猛になり、貪欲にたくさんエサを食べて、さらに大きくなると推測されます。1998年から2000年は、若いニジマスのエサとなる、陸生昆虫や水棲昆虫も高気温で豊富だったと考えると、彼等が大型化する条件を満たしています。 気温を基礎として推測したに過ぎませんが、なかなか興味深いと考えています。この推測通りだと、あと数年は大型ニジマスが期待できるのですが。今年、大型ニジマスが釣れたら、その鱗を1枚採集して、専門家に年齢を調べてもらおうと考えています。
□ ヘミングウェイ
釣りのスタイルや考え方が確立したのは1982年11月7日です。その日は、「ヘミングウェイ釣文学全集・上巻・鱒」を読み終えた日でした。今もその本は大切にして、時より読み返しています。その頃まで、私にとってのヘミングウェイは、単に釣りが好きだったから、「老人と海」の小説を読み、映画も観ていた程度の存在でした。書店で偶然にこの本を見つけて、ヘミングウェイが有名な釣り師であり、鱒釣りにも見識が高いことを初めて知りました。そして、その本に非常に興味を持って何のためらいもなく購入しました。鱒釣りを題材とした14の短編集です。読み始めると、フライで釣れないとフライタックルのままで、なんと、毛鉤をはずしてミミズをエサに釣っていました。驚きました。唖然としました。そして、「なんだ、やってるんだ」と叫びたい気持ちでした。5歳でノベ竿ミャク釣り、中学生でルアー、高校生でフライを始めて3種類の釣りを続けていた中で、川や魚の状況によって、ひとつの釣法が他の釣法を圧倒し、抜群の釣果が得られることは分かっていました。それでもやはり、エサは強いと実感していました。ルアーで釣れない場合は、ルアーをはずしてエサを使い、フライで釣れない場合は、毛鉤をはずしてエサを使っていました。北海道ではイトウのドジョウ引きやアメマスのコロガシ釣りが存在し、馴染みが深かったので、「ルアータックル+エサ」はあまり抵抗がありませんでした。しかし、「フライタックル+エサ」は完全に邪道と思っていて、それでも行っていることに引け目を感じ、心には常に葛藤がありました。そんな思いの中でこの本に出会いました。あのヘミングウェイでさえ、より釣れる方法を何のためらいもなく選択するという事実で心が晴れました。その時、人がどう思おうと信念を持って自由に発想し、狙った魚は必ず釣りあげると決心しました。それぞれの釣法を究極まで追及して行こうと決心しました。すると、今まで見えなかった釣れる要素が見えるようになり、エサに頼って釣っていた魚がルアーやフライで釣れるようになりました。 開高健、鍛冶英介、アイザックウォルトン、いろいろな人物や書物から影響を受けましたが、ヘミングウェイには感謝しています。
□ ラパラ
イトウやアメマス狙いに絶対の信頼を持って使っているのが、ラパラのCD−7、CD−9、CDJ−9です。振り返ると、金山湖・標津川・風連川・釧路川・別寒辺牛川・当幌川・サロベツ川・知来別川・猿払川とまだいろいろありますが、昔から使っていました。現在も、ほとんどラパラばかりで、他のミノーの必要性を感じていません。一時期、ディープミノーの機能やリアルさに心が動いた時期もあります。しかし、きつい前傾姿勢、リップで水流を受けない時の遅い沈下速度、強いロッドアクションによるバランスの崩れ、すぐに新型が販売されることなどが、どうしても気に入りませんでした。ディープミノーはニジマスやヤマメの時に小型を使います。イトウやアメマスにはやはりラパラです。そのラパラですが、少し手を加えています。まず、塗装の目が嫌で、プラグに合わせた大きさのグラスアイを取り付けています。比較的フックとスプリットリングが軟らかいので、硬いものに交換しています。実績のある色は、Gold、Shiner、Silver、Fire
Minnowです。Shinerは頭の部分を蛍光赤で塗っていますが、色加減で魚の反応が違います。なかなか難しいものです。水流の強さ、川の規模、魚の大きさ、活性や警戒心の程度を考えて3種類を使い分けます。ちなみに、遅い流れから速い流れでCD−7、CDJ−9、CD−9の順番に対応します。CDJ−9のクネクネの動きは魚を引き付けます。操作の基本は、リーリングスピードを抑えて、ロッドアクションを十分に加えることです。深みや障害物の陰に潜むイトウやアメマスの目の前に、生きた動きのラパラを持って行き、さらに誘いをかけます。核心域では、リーリングせずに、ラパラを躍らせます。これによって、リアルさやアクション機能が決して高いとはいえないラパラですが、十分な釣果をあげることができます。現在のミノーは、そのリアルさとすばらしい動きで魚を惹きつけます。大変喜ばしいことです。しかし反面、釣り人の技術の向上を妨げていると感じています。その点、ラパラは、自分の技術が釣果を左右し、自分の技術で釣ったという満足感を得ることができます。だからこそ使っています。
□ 渓遊会
道新スポーツ釣り新聞ほっかいどう主催「つりしん大物ダービー」淡水釣り部門ニジマスの部で、私と所属する「渓遊会」メンバーで2002年度と2003年度の連続優勝をはたしました。成績は2002年度が74cm、2003年度が77cmです。ダービーを知らない、ダービーに興味がない、単独釣行で証人がいないなど、もっと大きなニジマスをあげた方もいると思います。しかし、川で70cmクラスのニジマスは、相応の評価に値すると思います。今年も当然70cmオーバーを目指しています。ここで、渓遊会について説明します。渓遊会は淡水専門の釣り会で、源流、渓流、本流、湿原河川、湖で一年を通して釣りを楽しんでいます。釣法は、ミャク釣り、ルアーフィッシング、フライフィッシングで、こだわりはありません。興味のある方はぜひご連絡ください。
□ 釣れる目
多くの釣り人と接して気づいたことは、川の流れの見え方にかなりの個人差があるということです。水が物理的に流れている形や速さを、瞬時に把握できる人とできない人がいます。たとえば、川の中央のあの一番太い流れの右岸側で、隣のやや遅い流れとの間にある、時々小さな渦が巻いている幅10cmほどの流れを狙えと、細かく指示をした場合など、その差がはっきり現れます。 この川の流れの形や速さの違いがはっきり見えるかどうかは、川釣りではたいへん重要です。皆さんは真剣に川の流れを見ていますか。はっきり見えていますか。
□ 川の名前
すごく気になっていることがあります。釣りの関係サイトで、川の名前を公表しないことが多くあります。某川、A川、○川などの類です。ポイントを知っていることは、釣り人の財産であり特権ですから公表する必要はなく、公表しないことに文句を言ってはいけないことです。しかし、釣果を公表するなら川の名前くらいは出しても良いのではないでしょうか。何故でしょう。全てのケースではないにしても、やはり、自慢はしたいけれど、釣り場に繋がるヒントは絶対に秘密にしたいというのが本音だと思います。私は、川の名前を公表しない釣果は、その釣りを疑わしく信憑性がないものにしかねないと思っています。、公表するなら必ず川の名前を出すようにしています。
□ 見当違い
ミャク釣りファンから、「何故、釣れないのでしょうか」と質問を受けました。あまりに漠然とした質問なので、こちらから質問してみました。
・ その川に魚はいますか。
・ 浅すぎたり、流れが速すぎませんか。
・ 魚のいる場所がわかりますか。
・ 魚が活性している時間帯を知っていますか。
・ 魚に警戒されていませんか。
・ 仕掛けの作り方に間違いはありませんか。
・ 魚のいる深さにしっかりエサを流していますか。
・ 魚が食ってくるスピードでエサを流していますか。
・ エサを自然に流していますか。
・ エサの種類や付け方に間違いはありませんか。
・ 魚のアタリを的確にとらえていますか。
・ アワセはきちんとできていますか。
送られてきた回答はあいまいなものが多く、最後に、「どうすれば、釣れるのでしょうか」とありました。何故釣れないかの質問には、素直に答える必要などなく、どうすれば釣れるのかを伝えることが大切と悟りました。
□ 右利き <2004.4.6>
私は右利きです。長年ルアーフィッシングでは、右手でロッドを持ち、投げた後すぐに左手にロッドを持ち替えて、右手でリールを巻いていました。現在多くの釣り人は、利き手でロッドを持ち、反利き手でリールを巻きます。持ち替えない分スムーズな動きができて合理的です。何故、不合理なことをずっと続けていたかというと、それは昔のことが始まりです。私がルアーフィッシングを始めたのは中学校1年生の時で約30年前です。当時はまだ新しい釣り方で、解説書はなく、理論に長けた大人の助言もなかったので、売っていたままの右ハンドルのスピニングリールを、何の迷いもなく使っていました。さらに、大物にはベイトキャスティングリールが良いと知り、これも右ハンドルだったので、左手巻きなど考えも及ばずに、すっかり右手巻きが体に染み込んでしまいました。数年経って、利き手投げ反利き手巻きの優位さと知り、改善しようとしましたが、慣れてしまった体はそれを拒み、特にルアーにアクションを加える動作で、右手のロッド操作と左手のハンドル回転速度との微妙な兼ね合いが上手くいきませんでした。このような状況で釣りを続けていて10年位前に、左肘がすごく痛いので病院へ行きました。「上腕骨外側上顆炎」(じょうわんこつがいそくじょうかえん)、別名「テニス肘」で使い過ぎが原因と診断されました。左腕はロッド操作で肘を動かし、力が必要な方です。安静を保つように言われましたが、釣りはやめられません。それ以来、右手でロッドを持ち左手でリールを巻くようになりました。
□ ウェーダーの底
湿原河川の周辺は晩秋から早春は雪をかぶり、他の季節は湿地か土か草の状態です。そこを釣り歩く時、はっきり言ってフェルト底は役に立ちません。滑べることはもちろんですが、雪の場合はフェルトに雪がくっついて厚い層になり歩けなくなります。そこで私は、フェルトを剥がして冬の雪道・氷道用のゴム製の靴底を貼っています。これがなかなか具合が良く、特に形が六角形で中心が丸ポチのタイプは、泥や雪が離れやすくグリップ性に優れていて大変重宝しています。湿原河川は急深で川に入らずに川岸を歩く釣りなので、長靴でも良いのではと考える人もいるでしょう。しかし、湿原は膝まで、時には胸近くまで埋まります。ウェーダーが絶対に必要です。特に、普通の釣り人が行かないような奥地を狙う時には。