□ 体重を乗せる
野球のピッチャーの投げるボールの球質に軽い重いがあることを、子供の頃に夢中で見たテレビアニメの巨人の星で初めて知りました。主人公の星飛雄馬は剛速球投手ながら、当たれば遠くまで飛んで行く軽い球質で挫折しますが、努力と根性で大リーグボールという魔球を身につけて活躍します。フライフィッシングでもある時期から、フライラインの質に軽い重いがあることを感じています。体重が乗った時のフライラインは風を切り裂いて勢いよく伸びて行きます。ラインスピードだけでは語れない何かがあります。そして、体重を乗せるためのキャスティング技術が確かに存在します。重要なのは体重移動と腕のストロークです。体重移動はテニスのフォアハンドが参考になります。腕のストロークは、変わった例えですが、演歌歌手の五木ひろしが歌う時に行うあの粘るような腕の振りが参考になります。フライラインに体重を乗せることができれば、フライフィッシングがいっそう楽しくなり、釣るための強力な武器になります。
□ 応急処置・ミャク釣り
・ ウェーダーやウェーディングシューズの底のフェルトが剥がれかけたら、自分が履いている靴下を脱いで、それらに履かせます。フェルトにはかないませんが意外に滑りません。一足分(2枚)を履かせても良いし、半足(1枚)を履かせてダメになったら交換してもOKです。耐久性に問題がありますが、その日の釣りくらいはもちます。
・ マルチレングスでない延べ竿を短くして使いたい時は、まとめた竿と延ばしている竿の接続部分がぐらつくので、ビニールテープを巻いて固定します。ビニールテープはあらかじめ竿に巻いておくと便利です。
・ 延べ竿の先を折ったら、予備のリリアンを用意しておいて、竿先に差し込んで瞬間接着剤で固定すればOKです。リリアンを持っていない時は、適当な長さに切ったミチイトを竿先に巻いてコブを作り瞬間接着剤で固定します。そのコブのすぐ下に仕掛けを結べばコブがあるのでスッポ抜けません。瞬間接着剤がなければ、コブ自体が竿先からスッポ抜けることがあるので、その場合はコブをできるだけ細長く作るしかありません。また、適当な長さに切ったミチイトの先を2重にして8の字結びを作ります。その部分をリリアンのように竿先から余しておいて、残りのミチイトを竿先に巻いて瞬間接着剤で固定してリリアンとして使います。これも瞬間接着剤がなければスッポ抜けることがあります。瞬間接着剤は必需品です。
・ 延べ竿を中間から折った時は竿をばらして処置します。竿先から4番目の節を折ったとします。4番目は折れたので5番目の先より細くてなりこのままでは抜けてしまいます。そこで、4番目を5番目の中に入れて折れた部分を5番目の下から出します。折れた部分の4〜5cm幅に、ミチイトを巻きつけて抜けないように太くしていきます。デコボコにならずに平行に巻くことが大切です。最初から何段も巻かずに、時々竿を伸ばして引っかかり具合を確認しながら調整して巻いていきます。力を入れても抜けない太さになったら、ほどけないようにしっかり留めて完成です。巻いたミチイトがずれそうなら瞬間接着剤で固めます。
□ 感覚
随分前から、釣りをしている時に集中力がどんどん高まり感覚が研ぎ澄まされていくと、相反する2つの世界を経験しています。音が大きく聞こえる世界と音の無い世界です。両者ともに、その世界に入っている時は、その感覚を意識できていません。音が大きく聞こえる世界は、音が普通に戻った時に音が大きく聞こえた時間が確かにあったことを意識します。音の無い世界も、再び音が聞こえ始めた時に音の無い時間が確かにあったことを意識します。そして、どちらの世界も体験した後は、自然と一体になったようなとても静かな気持ちの良い感覚の中にいます。
□ フライタイイング
私がフライフィッシングを始めた1975年頃は、自分で巻いたフライで釣ってこそフライフィッシングの醍醐味があり、その感動は計り知れないと、洗脳されるように教えられていた時代でした。釣具店にもどこにも完成フライは売っていなくて、自分でフライを巻くしかない時代でもありました。タイイングツール、マテリアル、フックと教本を買い込んで、見よう見まねで一生懸命に巻きました。初めて巻いたフライで釣った時は感動はありました。しかし、その感動は想像していたような凄さは全くありませでした。当時から、釣ることが感動の全てで、釣りに至るまでの過程を忘れてしまう性格でした。世の中に反抗することが、自分を主張する手段だと考えていた年代でもあります。フライは必要だから巻くのであって、巻くこと自体が格別に楽しいと思っていませんでした。それでも、自分が思い描くフライを完成させる達成感と実際に釣る楽しみをたよりに、10年位は真剣にフライを巻き続けました。元来手先が器用なこともあり、釣れるフライを巻けるようになりました。その後、完成フライが釣具店の店頭に並び始め、国内や海外の通信販売やネット販売が増えて、安価で完成度の高いフライが容易に手に入るようになりました。サービスは充実し、希望するフライを作成してくれるまでになりました。私には良い時代が到来し、今ではフライを巻くことはほとんどありません。また、フライを巻くことに熱中している皆さんから、毎年フライが送られて来ます。北海道の天然魚に効果があるかどうか試してほしいと希望されます。当然試して、状況や意見を伝えています。すると、改良型が送られてきて、すばらしいフライに仕上がっています。フライの作成は上手な方に任せて、助言者の立場にあることが好きです。私が何より大切なのは、誰よりも釣れる釣り方の探求に没頭することです。
□ 川の防災情報
川の水位や雨量を調べるために国土交通省のホームページの「リアルタイム川の防災情報」を利用しています。その中で、河川の水系名や河川名が間違っていることがあります。以前から気になっていたので、関係機関に問い合わせを行いました。今回は茶路川の件で、茶路川の水位を確認すると、表示される水系名と河川名が和天別になっています。2010年2月25日に国土交通省へはメールで、釧路土木現業所へは電話で問い合わせを行いました。お役所仕事で返事が来るまで時間が掛かるだろうと思っていたら、次の日に連絡がありました。迅速に対応してもらい、満更でもないなと感心しました。結果はやはり間違いでした。茶路川の他にも誤った表示があり、訂正すべく現在処理中なので、しばらくお待ちくださいとのことでした。訂正まではどれくらい時間が掛かるのでしょう。興味を持っています。
□ ギリギリ
ロッドやラインを、魚の大きさに対して弱いスペックにして釣ることが好きです。特にミャク釣りで、60cm以上の大物を相手に、竿やミチイトを、あえて釣り上げられるギリギリのスペックにして挑みます。気を抜けばすぐにやられてしまいます。魚を掛けた瞬間から背筋がぞくっとして、全身に冷や汗が流れ、魚の出方を予測しながら、常に魚の先手を取らなければならない状況に身をおいて、緊張感でアドレナリンを噛みしめながら、感性と技と経験を駆使してもなお、必死に動きまわらなければならない釣りです。一度経験したら、きっと病み付きになります。長くて強くしなやかな本流竿を使い、リールが存在しない、つまり魚との距離が決まっているミャク釣りでこそ最大の魅力を感じます。いろいろな釣りをしていますが、その釣りでこそ最大限に魅力を発する領域が確かに存在します。
□ 水の底
私は釣りの道具を、釣り場に置き忘れたり、落として無くしてしまったことがめったにありません。しかしロッドやリールが川や湖に沈んでしまったことはあります。30年位前の話を含めて、今も強く印象に残っている出来事を少し紹介します。
・ 然別湖をゴムボートでトローリングしていた時です。2の湾から1の湾へ向かう途中で、ボートの方向を変えたとたんに強いアタリがありました。その時、ロッドとラインは角度がなく一直線の状態でした。あっと思った瞬間に、魚にロッドを水中へ持っていかれました。ロープでロッドとボートを結んでおかなかったことが悔やまれます。フェンウイックのロッドとアブ・カーディナルのリールが湖の底へ消えました。
・ 阿寒湖をプレジャーボートでトローリングしていた時です。ロッドを2本出していました。1本はロッドホルダーに固定し1本は手に持ってアクションを加えていました。ヤイタイ島付近で固定したロッドが根掛かりしたので、ボートを止めてからまず手に持っていたロッドのライン回収を始めました。その間もボートが移動し、根掛かりしたロッドが折れそうに曲がったので、ライン回収を途中でやめて、根掛かりしたロッドの対応を優先しました。すると、後ろでガタガタと音がしてバシャと音がしました。振り返ると、先ほどまで手に持っていたロッドが水上を走り、水中へ引き込まれていくのが見えました。途中で回収をやめたルアーに魚がヒットしていました。フェンウイックのロッドとアブ・アンバサダーのリールが湖の底へ消えました。
・ 糠平湖をカヌーに乗ってルアーで釣っていた時です。友人と二人でした。体を伸ばして休憩しようと思い、カヌーをめがね橋の近くに寄せました。私だけが岸にあがり、友人は再び湖へ漕ぎ出しました。のんびり湖を眺めながらタバコを吸った後にカヌーに目を向けたら、何とカヌーが転覆して友人がしがみついています。あわてました。友人はカヌーにしがみついたまま、足をバタつかせて何とか岸までたどり着きました。シェークスピアのロッドとミッチェルのリールが湖の底へ消えました。
・ 釧路の雪裡川を釧路川の合流までカヌーに乗ってルアーで釣った時です。友人と二人でした。雪裡川の支流にカヌーを浮かべてくだり、雪裡川に入って釣りを始めて間もなくのことでした。速い流れに乗ってしまい、まずいと思った先に大きな倒木がありました。避けようとしましたが、倒木にぶつかってあえなく転覆しました。私はカヌーにしがみつきながら岸にたどりつき、友人は泳いで岸にたどり着きました。二人とも必死でした。危うく命を落とすところでした。スミスのロッドとシマノのリールが川の底へ消えました。
以上の場所で、奇跡的にロッドやリールを釣った方がいたら連絡してください。引き取ってきっとお礼します。
□ 冬の変化
長年書き綴っている釣り日記を読み返していると、十勝地方の冬がだんだん短くなり暖かくなっているのが分かります。10月を少し過ぎても、川でヤマメが普通に釣れるようになりました。11月初旬に上流域で、ドライフライにオショロコマが素直に反応してくることが多くなりました。平野部の川では、12月に入ってもニジマスが釣れることが多くなりました。十勝川河口では12月下旬にチカやキュウリの氷上釣りができましたが、ここ数年は結氷が遅れて1月上旬にやっと氷に乗れるかどうかという状況です。湖や沼の結氷が遅れて、ワカサギの氷上釣りの開幕が遅れ、終了時期は早まって釣れる期間が短くなっています。1月〜2月の厳寒期でも、川が凍らない区間が残りアメマスが狙いやすくなりました。雪解けと増水が早く治まって、春の釣りシーズンの開始が早まっています。個人的には、川や湖でサケ科の魚を狙う釣りが好きですから、良い傾向に推移しているといえます。しかし、あまりに変化が激しいと心配になります。
□ 熊よけスプレー
2008年の夏に熊よけスプレーでちょっとした事件がありました。石狩川上流で釣りをしていて、ポイントを移動しようと車に戻り、ハッチバックを開けたとたん、薬臭いのに気がつきました。かるく刺激もありましたが、何の臭いかはさっぱりわかりません。変だと思いながら、釣具を透明なケースに入れようとしたら、ケースの内側の一部分がオレンジ色に染まっています。何だろうとケースの蓋を開けたとたんに、ものすごい刺激臭です。あわててケースを車から出して中を調べたら、熊よけスプレーの液体が全て噴射されていました。林道を移動中に、振動の影響でストッパーが外れて、スプレーの上に置いてあったウェーディングジャケットの重みで噴射スイッチが押されたようです。臭いと色の正体は、熊よけスプレーの唐辛子エキスでした。すぐにケースを川へ持って行って、唐辛子エキスが付いた全ての物を洗って、ゴミ袋を三重にして中に入れて密封しました。車に戻ると、少しケースを開けただけなのに、唐辛子エキスの刺激が残り、涙は出るは、鼻水は出るは、咳き込むはでたいへんな目に遭いました。幸い、車の臭いは窓を全開にして走ったら治まりましたが、手に付いた唐辛子エキスの影響で、手は痛いほどにヒリヒリして、この辛さは深夜まで続きました。これなら熊も確実に逃げるだろうと、その効果を自らが体験した訳です。もし、ケースの蓋がしっかり閉まっていなかったら、車はどうなっていたのかと思うとぞっとします。翌日、唐辛子エキスが付いた釣具を、キッチン用洗剤で洗うときれいに落ちました。しかし、ウェーディングジャケットだけは苦労しました。キッチン用洗剤で洗い、洗濯用洗剤で洗い、酸素系漂白剤につけても、オレンジ色と臭いが残ります。オレンジ色はジャケットの内側だったのでさほど気になりませんが、臭いは我慢ができません。いっそ捨ててしまおうかと思いましたが、考え直してクリーニング店に頼むことにしました。洗ってはみるけれど、上手く落ちるかどうかは分からないと言われ続けました。やっと5軒目で、いろんな方法で洗って上手く行かなかった場合は料金はいらないと言ってくれる店がありました。任せたところ、オレンジ色は薄くなり、臭いは完全にとれていました。まだ職人はいると感激し、その仕事ぶりに感謝しました。
□ 持ちすぎ
物凄い数のルアーを持って釣りをしている人を見かけます。フィッシングベストやバッグはパンパンです。とても重そうですし、実際に重いでしょう。いつも思いますが、それだけの数のルアーを一日で使い切れるものでしょうか。私には無理ですし、何より不必要なルアーで重くなるのが嫌です。初心者なら、有効なルアーを選択することは難しいので、全てを持って釣りをするのはわかります。しかし、経験者は考えた方が良いと思います。対象魚と川の状況によって、明らかに不必要なルアーがあります。極端な例ですが、小渓流でヤマメを狙うのに25gのスプーンは使わないでしょう。対象魚と川の状況に合わせて、有効なルアーを選択すること、考えることは非常に重要です。ルアーに限らず、釣りは考えることが重要です。何も、徹底して必要と不必要に分けなさいとは言いません。もしかしたらと思えるルアーは持っていってください。分かっていながらも、全てを持って釣りたい方には迷惑な話でした。そういえば、物凄い数のフライを持って釣りをしている人もいます。
□ 信じない
「魚がライズを繰り返している中、いろいろなフライを流しても全く無視されて、最後に結んだフライをあっさりくわえた、このフライはすばらしい」という話を聞きます。このような話で、はたしてフライの機能を何の疑いもなく信じても良いものでしょうか。ライズがあるということは、魚に食い気はあります。無視されたフライには、魚が気に入らない何かがあり、いろいろ試した結果、最後に魚の好みに合ったフライに行き着いたと理解することはできます。しかし、重要な要因が欠けています。まず。釣り人の技術と判断です。フライの落とし場所や流し方は最善だったのでしょうか。これを誤ると釣れるものが釣れなくなります。単にフライの選択順番を誤っただけではないでしょうか。次の要因は時間です。大概の場合、フライを無視され続けた時間が1時間以上もあります。それだけ経てば、気温・水温・光量など川の状況が変化します。最後のフライを流した時に、魚の活性が急にあがっていて、食ってきたのかも知れません。フライの機能だけを素直に信じられるほど、やさしい釣りをしてきていないので、疑い深くなってしまいました。ただし、このようなフライを知ると、どうしても試さずにはいられません。
□ 目を閉じる
ミャク釣りで、目を閉じて仕掛けを流すことがあります。アタリが目印には出なかったけれど、絶対に何かがエサに触ったと感じた後に、その流れを狙う時はよく目を閉じます。川底をギリギリに流せていないと感じた時も目を閉じます。目を閉じると、暗闇の中で瞬時に手の感覚が研ぎ澄まされ、神経が集中するのを感じます。竿から伝わるかすかな振動を、少しも逃さずに捉えることができます。この技は、長い距離を流す本流竿の大物釣りには特に有効です。少々コツが必要ですが、習得は難しいものではありません。目を閉じてうつむきかげんに竿を構えてアタリを取ります。その格好は勝新太郎の座頭市が、仕込み杖をすっと目の辺りに持っていき、敵に対峙する姿をイメージしています。仕込み杖は下向き、竿は上向きですが、動きに何ら変わるところはありません。イメージできない方は、勝新太郎の座頭市シリーズを全て見てください。きっと、何かをつかめると思います。
□ 南部熊鈴
たいへん愛着のあった南部熊鈴の2連の鈴のひとつを失くしてしまいました。2007年の秋に、別寒辺牛川でホザキシモツケの密集地帯を通り抜けた際に、下の鈴が枝に絡み皮ごと引き千切れたようです。釣りが終わってから、失くしたことに初めて気がつきました。この鈴は、10年前に釣り雑誌の広告で見つけて一目ぼれして、すぐに日高の釣具店から取り寄せたものです。初めて持つ南部熊鈴でした。形状は幅1cm全長26cmの皮紐に上部はベルト通しの輪があり、下部に真ちゅう製の鈴が縦に2個付いています。手作りの趣きと音色が美しいすばらしい鈴でした。長年使ったことで皮は黒ずみ、所々にヒビが入って切れそうなことはわかっていました。皮の裏にもう一枚皮を張って補強しようかと思いました。しかし、数々の釣りの思い出が刻まれ、いい感じに古びたなんとも言えない雰囲気を壊したくはありませんでした。鈴がひとつになって使い続けるかどうか迷いましたが、結局は新しい鈴を買いました。すると南部熊鈴は驚くほど進化していました。革幅が4.2cmもあり全長は16cmです。これならめったなことでは引き千切れることはないでしょう。高級皮を使っていて色は黒を選びました。まるでバックナイフのケースのようです。鈴は2連で、真ちゅう製で大きさや形状はあまり変わりません。美しい音色は相変わらずですが音程が明らかに高くなっており、それぞれの鈴は音程が異なっています。確実に遠くまで響きそうな音です。ただし、ひとつだけ気に入らない点があります。ベルト通しがスナップで開閉しますが、ヤブ漕ぎが多いのでスナップが外れて失くす可能性があります。私にはしっかり固定してくれた方が安心です。先代の鈴を失くした時はたいへん落胆し、失くすくらいなら補強しておけば良かったとまで思っていましたが、今は2代目をたいへん気に入っています。先代は思い出として大切に保管しています。
□ 戒め
魚がいれば釣れると思っている人がいます。魚がいても釣れない人がいます。釣れなければ魚がいないと思っている人がいます。少しやれば、すぐに釣りは上手になると思っている人がいます。レベルの基準がわからず、自分は釣りが上手だと勘違いしている人がいます。間違って釣れたのを、釣ったと勘違いしている人がいます。経験と技術は正比例すると思っている人がいます。なぜ釣れるのか、なぜ釣れないのかを考えない人がいます。魚の生態を学ばない人がいます。天候やフィールド状況を考えない人がいます。大物を1匹釣っただけで、大物釣りを語る人がいます。真の大物狙いを理解してくれない人がいます。技術がないのに理屈だけ一人前の人がいます。格好だけや道具だけ一人前の人がいます。平気でポイントに割り込む人がいます。平気でゴミを捨てる人がいます。釣りの奥深さを理解してくれない人がいます。これらは他人事ではなく、自分への戒めと思っています。
□ 十勝川のイトウ
2007年の暮れに昔の十勝川を知る老釣師と酒を飲む機会があり、当然のようにイトウの話が出ました。ドジョウ引きで1m以上を釣った話からルアーフィッシングへの変遷など、自慢話を交えながら昔を懐かしんで大いに盛り上がりました。そう言えばもう10年近く十勝川でイトウを狙った釣りをしていません。年々棲息数が減少し今では絶滅寸前の状況です。稀に釣れたという話は聞いています。そこで、自分の目で確かめてやろうと思います。最悪の状況ですが、この冬から来春の雪解けまで、十勝川の新得町〜千代田堰堤の間でイトウを狙います。過去にイトウが釣れたポイントはわかっていますが、今はどうなっていることでしょう。まずはポイント探しから始めなければなりません。そこで協力者を求めています。積雪の中を川まで歩いて行きポイントを確認しなければなりません。厳寒の中で釣れない確率が非常に高い厳しい釣りになります。興味のある方は連絡をください。ずるい誘い文句ですが、イトウのポイントは即ち大物ニジマスのポイントでもあります。
□ ゆっくりできない
川原に車を止めてテーブルや椅子を出して、ゆっくりたたずんでいる釣り人をよく見かけます。コーヒーを沸かして飲んでいたり、食事を楽しんでいます。釣りを通して自然に親しむスタイルなのはよくわかりますが、私には無理です。随分前に一度コールマンの道具を買い込み、このスタイルを試みましましたが、どうしても馴染めませんでした。道具は家のどこかに埃を被って眠ったままです。特に一人で釣りに行った時は完全に自分が出ます。私はできれば一日中釣りをしていたいと思っています。ただ、集中や緊張がとけた時や疲れきった時は、仕方なく少し休憩を取ります。お腹が減っている時は、歩きながらおにぎりを食べています。時間がもったいなくてゆっくりできません。釣らなければならない魚やポイントが私を待っています。ゆっくりするのはもう少し年をとってからにします。まだまだ釣りたくてたまりません。
□ 山菜とキノコ
山菜やキノコを採りに行くことはありませんが、川へ釣りに行って見つけると嬉しくなって採ってしまいます。知っている種類といえば、山菜はフキ、ヤチブキ、ワラビ、ギョウジャニンニク、ゼンマイ、コゴミ、ウド、タラの芽で、キノコはボリボリ(ナラタケ)と落葉キノコ(ハナイグチ)ぐらいなものです。キノコは知識がなく危ないので、はっきり分らなければ採りません。山菜で印象深いのは、ギョウジャニンニクを初めて見つけた時です。アイヌネギと呼んでいました。川近くの林の中に一面に生えていました。試しに茎を折って匂いを嗅いでみいたところ、あの独特のニンニク臭さがあり間違いないと思って沢山採りました。ビニール袋に入れて車のトランクで持ち帰りましたが、まさかあれほどトランクに匂いが付くとは思っていませんでした。しばらくの間なかなか匂いが取れなくて困りました。キノコで印象深いのはボリボリです。源流域で川に横たわった大きな倒木にびっしり生えているのを見つけました。菌が付いた木が倒れて流れ着いたようでした。もちろん採って持ち帰りました。歯ごたえといい味といい、今までで最高においしいボリボリでした。今でもあれを超えるボリボリには出会っていません。釣りに行って目的のポイントの近く車があると先を越されたかと思いがっかりします。しかし、それが山菜やキノコ採りだと分るとほっとします。
□ つりしん大物ダービー 3回優勝
週間釣り新聞ほっかいどう「2006年度つりしん大物ダービー・ニジマスの部」において76cmで優勝しました。私自身2006年度から2年連続となり、初参加した2002年度から3回目の優勝です。2003年度、2004年度も優勝魚の釣りに同行しています。これで5年連続で私が釣ったか確認したニジマスが優勝しました。70cm以上にこだわりがあるので、とてもうれしく思っています。そこでこの5年間を振り返ってみます。ニジマスの大物を単独でしか狙わなかった私が大物ダービーに初参加したのが2002年度でした。既に大物ダービーのことは知っており毎年60cm台が優勝魚で、これでは北海道としては物足りないと考え70cm以上での参加と決めました。またその頃は、大物用本流竿の満足できるものがやっと各メーカーから販売され始めたので、ミャク釣りで大物を狙うことに夢中な時期でした。2002年度から2005年度の優勝魚は全てミャク釣りです。2005年に密かに目標にしていた80cm以上をミャク釣りで釣った時に一応のけじめがつきました。今度はルアーかフライで狙おうと思い、2006年度はルアーで釣りました。2002年度、2005年度、2006年度は大きさだけではない満足感があります。それは、同行者が釣れなかったポイントに後から入って釣ったことです。人が釣れなかったポイントで釣った時の気持ちは、釣り人の方ならお分かりでしょう。まして大物です。反面、2003年度、2004年度は、先にポイントを攻めた同行者にみごとに釣られてしまいました。祝福した直後から悔しさがこみ上げたのを憶えています。5年連続という良い区切りが付いたので、当分の間は大物ダービーを考えて狙うことはないと思います。しかし常に70cm以上を狙い続けたいと思っています。
□ インジケーター
フライフィッシングのルースニングで速く深い流れを狙う時は、どうしても重いシンカーが必要になります。経験から魚は、割りビシの大々(ガン玉4B)までが対応できる速さの流れに多くいるのを経験しています。しかしこの重さに対応できるインジケーターは市販されていません、そこで、エサ釣り用のシモリウキを改造して使っています。(株)ハヤブサ「ストッパー付発泡シモリ・流線8号」を使います。普通の発泡シモリよりしっかりコーティングされて、硬い材質で造られています。改造は簡単です。ノコギリでシモリウキの縦方向の中心線上に半分の深さまで溝を切ります。次に、(株)ハヤブサ「ウキゴム一直線・内径1.5mm外径3.0mm」を約5cmに切ります。使い方は、ウキゴムにリーダーを通して、ウキゴムを縦にシモリウキの切った溝の部分にはめ込んで固定します。あまり大きなノコギリつまり厚みのあるノコギリを使うと、溝の幅が広くなってウキゴムの固定があまくなるので注意が必要です。
□ 余裕
川の釣りで、あるポイントに魚の大群がいて、隣同士が邪魔になるほどたくさんの釣り人がいるけれど、みんながどんどん釣っていたとします。そんな時、私はその仲間に入りたいとは思いません。私が一番はじめに釣っていて釣り人でいっぱいになったら、そのポイントから離れます。入渓地点に既に車が数台止まっていたら、迷わずに次の入渓地点を目指します。車で移動中に川に釣り人を見つけたら、かなり離れてから入渓します。釣っていて先行者に追いついたら、先行者の了解がなければ追い越そうとは思いません。先に釣っている人のポイントへ割り込むなど論外です。私はこのくらいの余裕を持ちたいと思っています。私にとって、「たとえ釣れるとしても」は、「たとえ釣れなくても」と全く同じ意味を持っています。たとえ釣れるとしても、自分がしたくないことやされたら嫌なことはしません。それで、たとえ釣れなくても後悔はありません。
□ 教えたいこと
団塊の世代の皆さんでしょうか。2006年頃から、60歳前後の方からのガイドや講習の依頼が急に増えました。皆さんの多くは、川や湖の釣りについて、道具面や実践面でいろいろな疑問を持っています。道具面の疑問は、釣り具店で聞いたり、解説書や雑誌を読んだり、インターネットでメーカーの説明や使用者の意見を調べて解決しているようです。調べられなかったり情報量が多過ぎて迷った時が私の出番です。実践面でも多くの疑問を持っています。その中で私が一番教えたいのは、「魚は川のどこにいるか」ということです。それぞれの川によって魚の濃さには差があります。しかし、どの川でも魚がいない所の方が、いる所より圧倒的に多いのが現実です。まず、魚は川のどのような形状をした場所にいるかを教えます。これが、トロやフチや瀬といったポイントです。そして、最も重要なことですが、各ポイントの中で、魚がどの流れにいるかを見つけられるようになってほしいと思っています。これから年齢を重ねると運動能力は低下し、遡行が厳しい川の釣行は難しくなり、遡行距離も短くなります。釣り人が入りやすく、魚が釣られた区間の釣行が多くなります。かさねて、技術的な精度も落ちるでしょう。そのような状況の中で、釣るための最大の要因は、魚がいる流れを読めることだと思います。また、いろいろな釣りの楽しみ方も教えています。特定の魚種だけを狙う釣り、大物を狙う釣り、数を狙う釣り、釣果ではなく自然を楽しむ釣り、キャスティング技術や距離を競う釣り、道具を楽しむ釣りなど、いろいろな釣りを知った上で、自分に一番合う釣りを見つけてほしいと思います。
□ 戒め
魚がいれば釣れると思っている人がいます。魚がいても釣れない人がいます。釣れなければ魚がいないと思っている人がいます。少しやれば、すぐに釣りは上手になると思っている人がいます。レベルの基準がわからず、自分は釣りが上手だと勘違いしている人がいます。間違って釣れたのを、釣ったと勘違いしている人がいます。経験と技術は比例すると思っている人がいます。なぜ釣れるのか、なぜ釣れないのかを考えない人がいます。魚の生態を学ばない人がいます。天候やフィールド状況を考えない人がいます。大物を1匹釣っただけで、大物釣りを語る人がいます。真の大物狙いを理解してくれない人がいます。技術がないのに理論だけ一人前の人がいます。格好だけ道具だけ一人前の人がいます。釣りの奥深さを理解してくれない人がいます。これらは他人事ではなく、自分への戒めと思っています。
□ 70cm超ニジマス
北海道の川で毎年1匹はニジマスの70cm超を釣り上げることを目標にしています。私が釣れば最高にうれしいことですが、他の人が釣っても自分の目で確認できれば良いと思っています。この5年間(2002〜2006年)で釣った70cm超ニジマスは全てメスです。そういえば、今まで釣った70cm超ニジマスは圧倒的にメスが多い状況で、80cm以上は全てがメスです。不思議に思い、ニジマスの成長について調べ、魚類の専門家にも尋ねてみました。すると、同じ期間生きていればオスの方が大きくなる確率は高いが、オスはメスに比べて寿命が短いことが多いとわかりました。ニジマスの成熟は、オスは2年目からメスは3年目からです。オスはメスより1年早く成熟し産卵行動を始めます。産卵行動は魚にとってとてつもない体力を消耗するので、数年連続で行うと、1年早く産卵行動したオスはメスに比べて1、2年早く死亡するというのです。70cm超になるには、1年でも長く生きなければならないので、その可能性が高いのがメスということになります。オスの70cm超えを久し振りに釣りたいものですが、こればかりがどうしようもありません。
□ つりしん大物ダービー 2回優勝
北海道新聞社「週間釣り新聞ほっかいどう」の「2005年度つりしん大物ダービー」ニジマスの部で優勝しました。記録は80cmです。私自身、2002年度に続き2度目の優勝であり、2003年度、2004年度も優勝魚の釣りに同行しています。これで4年連続、私が釣ったか確認した70cm超のニジマスが優勝しました。「週間つり新聞ほっかいどう」は、創刊から購読し始め大物ダービーのことは知っていました。しかし、大物釣りを単独で行っていた私にとっては、確認者がいないので規定に合わず、傍観することが数年続きました。そんな中、優勝魚が60cmクラスなのが気に入らなくなりました。確かに60cmクラスは大物です。しかし、ニジマス王国の北海道で優勝するには役不足です。また、私が生まれ育ち、北海道でも中心的なニジマスの棲息域である十勝から優勝魚を出したいと思いました。そこで2002年に、意を決して74cmを釣りあげて初参加しました。今年からは、十勝以外の地域にも目を向けていきたいと思います。狙わなければならなフィールドが目に浮かびます。
□ 橋から川を見る
車で道路を走っている時、川を見つけるとワクワクします。川沿いの道路から河畔林や民家の隙間に川が見えたら、気になって仕方がありません。そして橋を渡る時は必ず川を見ます。幼い頃からの癖というか条件反射のようなものです。橋を渡る前は、時に、2車線なら左車線へ移動し、車間距離を十分に取ります。しっかり見なくて後悔したくないので、釣ったことがない川や渓相がすばらし川は、車を止めて外に出て、橋の上からゆっくり川を見ています。
□ 上流域の変化 <2006.1.25>
近年、北海道では魚の数が多くなった流域がいくつかみられます。いずれも最上流域や上流域です。私はその大きな理由を次ぎのように考えています。数年前までこれらの流域はいずれも、林道から枝分かれした作業道を車で進まなければ容易に川に近づくことができました。しかし近年、林業の衰退と自然保護の推進で、森林の木の伐採量が減り、伐採から伐採の期間が延びました。結果として、整備されなくなり通行が困難になった作業道が増えました。また、台風が北海道に接近したり上陸する回数が増えて、被害を受けることが多くなりました。風で倒れた木でふさがれたり大雨でえぐれてしまい、作業道が通行不能になったケースも増えています。これらによって、釣り人が簡単に車で川に近づけない状況になりました。もちろん歩けば行けますが、いつヒグマが出てもおかしくない山奥を、長い距離進むのはなかなか厳しいものです。釣り人の数が極端に減ったり、何年間も釣り人が入っていなければ、魚が増えてもおかしくありません。現在、これらの流域へ近づくには、以前に比べてたいへんな労力が必要です。しかし、魚のあの数や大きさの魅力には勝てません。これからも、復活する流域が増えることを期待しています。
□ もう一度 <2005.12.31>
ここ数年、年末を迎えると、来年こそはもう一度行かなければならないと、強く思う流域があります。大雪山脈十勝側のある場所です。今でもほとんど人に知られていませんし、知っている人でもほとんどが行かない秘境です。私があの流域を知ったのは、30年近く前で、源流域に大物を狙う釣師から聞きました。50cmのオショロコマと80cmのニジマスが確実に生息しているという話でした。話が真実であることは、実際に釣り上げた50cmに迫るオショロコマと70cmに迫るニジマスの魚拓を見てわかりました。そして、姿を見ただけで、あげきれなかった巨大なニジマスがいると話してくれました。私はあの流域に過去4回行っています。期待を裏切らない魚達がいました。険しい道のりを、常にヒグマの恐怖を感じながら進まなければなりません。水温が最高になる夏でなければなりません。水量が少なくてもライフジャケットを着て流されながら通らなければならない函があります。水量が増えると命にかかわるので、雨が降らない日でなければなりません。最後に行ったのは1998年の夏です。そして、2006年にもう一度絶対に行こうと思っています。今あの流域がどうなっているのかを考えるだけで興奮します。問題は一人では絶対に無理ということです。もう昔ほどの大物はいないかも知れません。しかし、今でもオショロコマとニジマスの宝庫であることに変わりはありません。
□ 改良
ルアーフィッシングで改良していることを紹介します。現在はルアーの開発が進み、実にいろいろな製品が手に入るようになりました。しかし、改良しなければ気が済まないことや、市販品では満足できないことがあります。
・ルアーはできる限りトレブルフックをシングルフックへ交換します。きっかけは、川底や流木などの障害物回りを狙った時に、とにかく根掛りを防ぐためでした。その後、時代に反映して魚へのダメージを考えるようになりました。当時はシングルフックが販売されていなかったので、最初はトレブルフックの1本や2本を切って使いました。それではどうしても魚の掛かりが悪く見栄えも悪いので、すぐにチヌ鉤を使って自作しました。
・ スプーンとスピナーのシングルフックを交換する場合は市販品で間に合います。しかし、ミノーはうまく行かないことがあります。小型ミノーで大型魚を狙う場合、装着されているトレブルフックでは強度が足りないことがあります。強いシングルフックへ交換したいのですが、強度を求めるとサイズが大きくなり、前と後のフックが絡まってしまいます。自作しますが、それでも絡まる場合は、後ろだけをシングルフックへ交換するか、あきらめて前後を強度の強いトレブルフックへ交換します。
・ 大型スプーンに目を付けることがあります。きっかけは、20年以上前に油性塗料で手書きの目を入れて、よく釣れたことです。目の必要性はあまり無いのかも知れませんが、効果があると信じています。釣れない時に目を付けていなかったら、後悔が残ります。手書きから平面型シートを経て、今ではリアルな立体型の目を付けています。通常はルアーの外側(表面)に、底引き対応時は内側にも付けます。また、ミノーのラパラCD系のように塗装の場合は、気に食わないので目を付けます。
・ スプーンをアワビ張りにすることがあります。アワビ張りスプーンは湖で効果があります。昔は自分で貼っていましたが、今はほとんど市販品で間に合います。しかし、両面張りにしたい時に、市販品の内側をさらにアワビ張りにします。ミノーもアワビ張りにしたことがありますが、アワビ張りでなくても十分に釣れるので、アワビ張りの必要性がなくなりました。
・ ルアーを重くしたい場合、釣り用の鉛ではなく、ゴルフクラブ用の鉛を貼っています。ミノーは腹部に、スプーンは内側に、バランスを考えて貼ります。貼った後は塗装するかルミシートを貼ります。スピナーは本体の中に鉛を入れるか、フックに鉛を巻きます。
・ ミノーに色を塗ることがあります。特定の魚種を狙う場合や、アタリが今一なシルバー系ミノーに、喉から腹部にかけて細長く赤色を塗ります。いろいろ試した結果、アルコール系インキの油性マーカーを使っています。本来の塗装と混じり合い、自然に仕上がります。赤色を入れることで、使えるミノーになることが多くあります。
・ スプリットリングが大きすぎる場合は交換します。ミノーやスプーンの一部には大き過ぎるものがあります。
・ ルアーロッドのグリップを切ることがあります。ルアーフィッシングを始めた当初から、いかにアクションを加えるかを考えていました。アクションを加える時、ルアーロッドのグリップ部分が長いとお腹あたりにぶつかってスムーズな操作が行えない場合があります。そのような時は、思い切ってグリップを切って短くします。
□ アメマスとサケ <2005.9.7>
十勝から釧路の太平洋に注ぐ河川は9月、産卵のために遡上したアメマス釣りが盛んです。70cmアップや80cmも夢ではありません。産卵前の太く体力が充実したアメマスは、すばらしいファイトで、とても楽しい釣りです。アメマスは8月頃から遡上しますが、ピークは9月のサケの遡上時期です。サケの卵を狙って、一緒に付いてくると言われています。事実この時期は、ミャク釣りのエサはイクラが、フライフィッシングではエッグフライが効果的です。このサケですが、アメマスの道案内としては欠かせない存在で、川に豊富な栄養を与えてくれる大切な魚ですが、実際のアメマス釣りでは邪魔者でしかありません。サケは、突然動いたり、跳ねたりします。静かな環境が好きなアメマスは驚いて警戒してしまいます。また、狙っていなくても掛かることがあります。口でもスレでも、あの大きな体で暴れられたら場が荒れてしまい、アメマスは全く釣れなくなります。そしてサケは禁漁魚(有効利用調査河川は除く)で釣ってはいけない魚です。サケが産卵を終えて一生を閉じた後も、大部分のアメマスは川に残ります。その時期にアメマスを狙えば良いのですが、彼等自身も産卵を終えて細く疲れきった体になっています。もう、あのすばらしいファイトは望めません。
□ 大物ニジマス狙い
北海道東部の川でニジマスの大物を狙うために特に注意していることを紹介します。
・ 徹底して川底を狙うことが有効です。大物はめったに水面へ近づきません。ましてや水面に顔を出しません。
・ 一番大きい魚を一番先に釣るように努力します。同じエリアに30cmと60cmがいて、30cmを先に掛けてしまうと場が荒れてしまい60cmは警戒して釣れません。そのために、ポイントの中で一番良い流れから狙います。大物は他の魚を圧倒して酸素やエサが豊富な位置に陣取っています。
・ 釣れないことを疑います。最高と思えるポイントでアタリすらない時、もしかしたら、一匹の大物の存在により、他の魚は怖くて近づけないのでないかと疑います。
□ 強すぎ
強すぎるアワセは、魚が口切れを起したりラインがアワセ切れを起します。魚との強引すぎるやり取りは、魚を水面近くに持ち上げてしまい、魚が暴れる力と重さに上層の速い流れの力が加わって、ハリが刺さった部分があまくなりバラすことにどんどん近づきます。また、強引すぎるやり取りではラインが切れてしまいます。魚をバラすことは悔しいことです。さらに、魚を暴れさせたりバラしてしまうと、場が荒れてしまい、アタリすら無くなるという悲しい状況につながります。そうなったら最悪です。
□ 異なる色
同じフィールドに生息し同じ種類の魚なのに、明らかに色の違う魚が生息しています。
・大雪山脈を源とする十勝川や石狩川の源流域では、普通の色のオショロコマに混じって、数は少ないですが鮮やかな銀色に輝くオショロコマが釣れます。特定のエリアに間違いなく生息しています。なぜそのエリアだけ銀色なのかはわかりません。
・知床半島の各河川はオショロコマの宝庫です。ここでも銀色のオショロコマが稀に釣れます。知床半島は山と海が接近して川の距離がたいへん短い状況です。銀色のオショロコマの中には、川と海を行き来して、ドリーバーデンのような大型もいると聞いています。
・然別湖のミヤベイワナは、身の色が赤身と白身が釣れます。赤身は回遊性で、白身は定位性と言われています。味は赤身のほうが格段に上ですが、今では数が少ない状況です。
・阿寒湖のアメマスは金色をしていることで有名です。しかし数は極端に少ないながらも銀色のアメマスも釣れます。金色は虫を主食にし、銀色はワカサギを主食にしていると言われています。阿寒湖のアメマスの味は淡水系アメマスの中ではトップクラスとされています。
□ 3連覇
北海道新聞社「週間釣り新聞ほっかいどう」の「つりしん大物ダービー」ニジマスの部で、主催する「渓遊会」が2002年から3年連続の優勝を果しました。2002年は私が釣り、2003年と2004年は私も同行した中でメンバーが釣りました。全て70cmを超えています。全て本流竿のミャク釣りです。3連覇できた要因は、大物が棲む川の状況を正確に把握できていたことがあります。釣行のたびに詳細に情報を蓄積した成果があらわれました。また、私が独自に行っているミャク釣りの新たな釣り方が、北海道の大物狙いに適してしていたこともあります。釣れる釣り方であることを証明することができました。大物をルアーやフライに頼り切らずに、釣り上げるのが難しいミャク釣りに長年こだわった甲斐がありました。効果的な釣法を確立できたことを、たいへん誇りに思います。
□ 本流大物竿 <2005.5.15>
8mの本流竿を初めて目にしたのは、1994年です。まだ、ヤマメやアマゴを釣る程度の強さの長い竿でしかありませんでした。その後、本流竿は大物対応へとどんどん進化しました。1997年に初めて、50cmクラスのニジマスが狙える強い本流大物竿を手に入れました。そして現在、本流大物竿は、サケを釣り上げるまでに進化しました。ノベ竿ミャク釣りで大物を狙い始めてから、本流大物竿が出現するまでの約20年間、何度も何度も悔しい思いをしてきました。短い渓流竿は、ニジマスやアメマスの大物がいる大きな川では、ポイントまでまったく届きません。川底を狙うための重いオモリを使うには竿先が柔らかすぎます。第一に、たとえ近距離で大物を掛けても、絶対的な竿の強さがなく、釣り上げるのは至難の業でした。最初は、なるべく長く強い胴調子気味の渓流竿を用意し、ポイントに届かせるために、竹を継ぎ足したり、他の竿と組み合わせたりしました。長さは確保しましたが、バランスや調子や感度がとても悪く、重たくて操作がたいへんでした。大物を掛けても渓流竿の強さでは、大物の強烈な引きでみごとに竿が折れました。折れる前に簡単にのされてしまい、ミチイトを切られることが大半でした。頭にきて、ルアーフィッシングやフライフィッシングに頼ったことも多くあります。しかし、ノベ竿での背筋がぞくぞくする引き味と、いつやられるかわからない緊張感が忘れられずに、ノベ竿の釣りを諦めることはできませんでした。今では、なつかしい思い出です。このような経験のせいか、本流大物竿でも、単純に強い竿を選ぶのではなく、狙う魚に対応できるギリギリの強さを選んでしまいます。竿の強さだけに頼らず、自分の腕で釣り上げてやろうと強く意識しています。一度、サケ用の竿で40クラスのニジマスを釣った時、魚の引きを全く楽しめずに、技術の出しようもなく、竿の強さだけで釣れてしまい、たいへんがっかりした経験も大きく影響しています。本流大物竿には、まだまだ不満なところが多くあります。しかし、これからもより強くより長くより軽くより操作しやすくと進化して、それぞれの釣り人が、自分の好みやスタイルに合った竿が選べる時代が来ることを期待しています。本格的な本流大物竿は、まだ10年くらいの歴史です。
□ アメリカのカタログ <2005.4.1>
ルアーフィッシングやフライフィッシングを始めた理由は、外国のカッコイイ釣りに惹かれたこともありますが、大部分は単純な大物志向にあります。ミャク釣りでは距離が届かない場所にいる大物や、竿が折れ糸を切られてしまう大物を釣りあげるために始めました。ルアーは33年前、フライは30年前です。当時、ルアーフィッシングはスプーンが中心でしたが、捕食とは別の魚の本能を意識した釣りと理解でき、何の疑問も持ちませんでした。しかし、フライフィッシングは、始めた時から疑問がありました。フライを本物のエサに似せる発想なのに、ミミズやイクラやクリ虫のフライが解説書に載っていません。解説書だけを頼りの独学だったので、疑問はあったものの、載っていることが全てでした。経験から大物は川底にいることを知っていたので、ウエット系フライの釣りは意識してやっていました。フライフィッシングを始めて1年位たった頃、アメリカのフライ用品のカタログを手に入れました。憧れの道具を見ていると、なんとミミズやイクラやクリ虫のフライがありました。インジケーターがありました。あの時の驚きと興奮は今も覚えています。すぐに実物を手に入れたかったのですが、注文方法の和訳は難しく、何より送料がバカ高くて、手が出ません。現在の通販や個人輸入は夢のような時代でした。とにかく、自分で作るか、日本にあるもので代用するかしか手がありませんでした。それからは、カタログが解説書になりました。WormやEggやMicro Spawnを自己流で作り使いました。想像以上の威力に満足しました。インジケーターでの釣りをマスターしてからは、釣果が格段にあがりました。ルースニングという言葉を知ったのは、随分あとになってからです。当時、これらのフライやインジケーターを使う人は非常に少なく、異端視されたこともあります。しかし、その絶大な効果を棄てるはずはなく、今も信念を持って堂々と使っています。
□ フィッシングベスト
フィッシングベストを、釣法やフィールドや季節によって使い分けていた時代があります。多い時は、ミャク釣り用、ルアー河川湖用、ルアー湿原河川用、ルアーメッシュ夏用、ルアー冬用、フライ春〜秋用、フライメッシュ夏用、フライ冬用、ボートトローリング用、の9種類ありました。当時は、それぞれの釣りを考えてベストを選び、必要だと判断し揃えていました。しかし、ルアーやフライの人気が高まり新素材や新機能も出現し、どんどん新商品が生まれた時代に翻弄された部分が強かったのではないかと、今は思っています。新しい物を求めてしまう若さもありました。自分が必要とするベストは何かが分かってからは、種類が減り、ミャク釣り用、ルアー・フライ春〜秋用、ルアー・フライ冬用の3種類に落ち着きました。現在、ミャク釣り用は、シマノ「ハイパーリベル本流ベスト」を発売以来使っています。完全に満足してはいませんが気に入っています。背面をメシュにできるので、夏もこれです。「ドライシールド本流ベスト」も捨てがたいのですが、前面の縦型ポケットが気に入りません。ミャク釣りでも、ルアー・フライ用を使う時があります。ルアー・フライ用は、春〜秋用2着、冬用1着で、フライフィッシングベストを基本にしています。必要のないポケットを取り外したり、改良を加えています。過去には、ポケットを全て取り外して、配置換えしたこともあります。春〜秋用は、ルアーとフライで改良に差があり、兼用ですが実際には、使い分ける傾向にあります。北海道も夏は暑いですが短いので、メッシュを特に用意してはいません。冬用は、ルアー傾向に改良し、冬は厚着をするので1〜2サイズ大きい物を使っています。近年、肩や首にかかる重さを緩和した物や、ポケット数・大きさ・配置を工夫した物など、いろいろありますが、未だに完全に満足できるベストはありません。その中からなんとか見つけて、買い換えようとしますが、結局、改良し長年使った物は愛着が強く、なかなか手放せません。オーダーメイドにも興味があります。歴史が古く、私自身昔から馴染みが深いORVISや、天然素材のFILSONに心が惹かれます。ウエアの充実を信頼して買い、気に入ったのがL.L.Beanです。Columbiaはマルチフィッシングベストを、生まれた年と同じ1960年に作り、気になる存在です。